第20話 夏休み - その1

あれから梅雨も明け、バキバキに暑い夏がやってきた。


夏休みに入ったということもあって、アリエの特訓は激化していくのは当然の事で「アリエ特性ドリンクエグゾダス」も爆誕した。が僕らはそれにも慣れつつあり、何だか割と健康的な生活を送っているのでは?と思い始めたりそうではなかったり(ただ練習疲れは物凄い)。


いつの間にかリビングのソファーで寝てて早朝おにぎりに顔を舐め回されて起きる事もしばしばあった。


僕の家は、高台の丘の上にあり、夜は涼しい風が窓から吹き込んだ。そんな理由もあって、ソファーにちょいと腰掛けるといつの間にか寝落ちしているわけだった。


母さんは相変わらず、というか前よりもバタバタしていて夜勤なのかなんなのか。とりあえずすれ違いが多くなってきた。僕が帰る頃にはいなかったり、帰ってくるのを見計らって仕事にいったり、夕飯だけは一緒に!という気遣いで夕飯を食べた後に出ていったりと。


寝落ちする時に限って、母さんは家にいなかったりするので完全に朝まで起きないパターンが多かった。おそらく母さんは僕がここでよく朝まで寝ていることは知らないだろう。


はてさて、まぁ今日もソファーで一晩明かしてしまったわけなんだけど。

今日は、久々のオフの日ということでかなり気が緩んでる気がする。ボサボサの髪をボリボリしながらスマホを見るとアリエからのメッセージがルームに着ていた。


「今日は、マジで暑いから練習無理。中止。海に行ってます(深い意味なし)」


と。


実はファクトリー2階のエアコンが2、3日前に故障して、アリエはかなりご機嫌斜めだった。暑さに堪えられない性分のようだ。

そんなこんなで、今日はメッセージにもあった通りオフなのだ。


冷蔵庫に麦茶を取りに行くと、母さんのメモが貼ってあった。


「メザス、昨日から海岸に珍しい魚が群れをなしてきてるから来てみたら?」


ふんふん、珍しい魚ね。麦茶を飲みながら窓を開けるとサンサンに輝く太陽の陽射しと青い空が目に飛び込んできた。眠気でボヤッとしてた瞳の奥に、強い光が差し、一気に眠気が覚めてきた。


「なお、お弁当は冷蔵庫の奥にサンドイッチが入ってるから海水浴とかには持っていきやすいと思われます」


と、メモの続きに書いてあった。


なぁるほど。


比較的、僕はインドア派なんだけど、最近は割と外に出ることも多くて、移動するという行動に対してあまり抵抗がなくなってきていた。


簡単に着替えを済まし、とりあえず海水パンツやらタオル、サンドイッチをリュックにぶち込んで僕は自転車にまたがった。

リュックの中には昨日練習で使って入れっぱなしのTHE ENDが入っていたけれどとりあえず入れたままでいいか!


坂道を自転車で一気に下ると気持ちのいい風が服の中に吹き込んで来た。



暑いけど、清々しい気分になる風だ。

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