第18話 セカンドライン-その1

メザス達がオービタル商事と練習試合を終え、さらなる特訓に励む頃、いつしか梅雨の終わりが近づく。7月も初旬に差し掛かっていた。



さて話は一度メザス達を離れ、時間は数週間前の私立六園学院高校に戻る。


私立六園学院高校は、数々のエリートを輩出する超名門校だ。


各分野の才能に長けた学生たちが集まる場所に、薬師丸本家の末弟、薬師丸改行がいた。


彼の家系は、まぁ分かりやすく言えば由緒ある家系であり、ジャンル問わず様々な天才が先祖から今まで勢揃いする恐ろしい家系であった。


特に文武で言う、「武」についてはほぼ全ての者が何かしらの武道をおさめているというくらいには強い。


改行はそんな家系、いや家庭内では末弟であったが、こういったシチュエーションでよくある「兄弟、家系内の優劣」という競争は無く、互いに尊重し合い鍛え合う環境で育ち、誰にも負けない気高き誇りと精神をもっていた。


そんな彼は、私立六園学院高校競技キーボード部主将であった。


………


さて、少し長い前置きであったが、興味深い出来事が先日起きた。

いや、興味深いのではなく、「来るときが来た」という表現が正しい。


度々、REVOLVERからアラートが鳴ることはあった。いわゆるORIGINSのブートアラートと言うやつだ。


世界中に散らばったORIGINS TKBが長期間のスリープを経て、起動する毎に通知されるブートアラート。


REVOLVERを長兄から譲り受ける時、そう教えられた。しかし、それ以上は誰もが話してくれなかった。


皆口を揃え、

「今はそのキーボードを使いこなせるようになれ」

の一点張りであった。


俺は、それに従いつつも、ファクトリーの情報網を密かに利用し、今まで様々な登録者やファクトリーヘッドと接触をはかってきた。


関西の結界といわれる縁キーボードファクトリー、ファクトリーヘッドの月山縁、その従者、卓兄妹。


北の大地、絶対零度のセスキーボードファクトリー、ファクトリーヘッドのセス・ホワイトランド。


その他、様々な「関係した者達」に接触してきたが、答えはほとんどわからずであった。


そんな何も新しい情報も見つけられないまま、夏の競技大会の稽古に追われていたある日。決定的な出来事が起きた。


いつもとは違うブートアラートがけたたましい音で鳴ったのだ。

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