第1話 じんせいの歯車
今日は、まかされた委員会の仕事も簡単なものだったのでサクッとすませてサッサと帰ることにした(途中先輩から追加で作業を頼まれそうになったが聞こえないフリをしてみたら割と効果があった)。
なんというか高校生活始まって二週間、未だ何かに慣れないのだ。前の席のやつ(名前が未だに覚えられない)は、やたらと休み時間にカロリーゲートばかり食ってるし、話題づくりに必死すぎて何をしたいのかよくわからない。
そんな事をモヤモヤ思いながら夕日が差し掛かる坂道を下っていると急にふと「たまにはコロッケパン食べながら帰ろう!」という考えが頭に浮かんできた。帰り道から一本向こう側の道に入って【いつもの商店街】へ向かった。気づけば中学時代、よく寄ってた商店街も一本通学路が違うだけで途端に寄らなくなってしまうのはなんだか不思議だった。メザスはこの商店街にあるパン屋満面堂で売っているコロッケパンが好きで、よく買い食いしながらブラブラ道草して帰るのが日課だったのだ。
……
「まいどありぃ、メザスちゃん!また来てくれよな!最近は馴染みの子もみんな来なくなっちゃったからさぁ!!」
ホクホクの気分でできたてのコロッケパン※を頬張りながら歩くと、なんだか見慣れないお店があることに気づいた。
ネオンっぽい照明となんだか昔っぽいCGでパソコンのキーボードが描かれたポスターとか「GB募集中!!」とかよくわからないポスターがガラスのショーケースに飾ってある店だ。「なんだこの店…こんなん1、2ヶ月前にはなかった気がするけど…パソコン屋…?」。割とお客さんがいるのかお店の外までガヤガヤと声が漏れてくる。中を覗いてみようかと足を伸ばしたその時、
母からの電話だ。「メザスいまどこにいる?帰り道だったら早めに帰ってきてくれない?手伝ってほしいことがあるのよ〜」。わかったわかった、僕はそうつぶやきながら自転車を押す足をお店から商店街への出口へと向けた。
そうそう、店の看板には「アリエボードファクトリー」と書いてあって、さらにその下には「競技用等のキーボード販売、オーダーメード」と書いてあったんだけどあれはなんだったんだろう。世の中知らない競技?があるもんだな、とその時はあまり深く考えなかったわけで。
※満面堂のコロッケパンは、お隣さんの肉屋【パクパク】のおじさんが揚げたコロッケをその場で挟んで食べれるホットなソウルフード。
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