07
小「今年も始まるのよねー、冷泉の夏会」
忍「まあ今年はまず選定からでしょうね」
小「あら、
忍「四王寺さんの所はもう成人になるわ。決まりはないけれど、本人も周りも長く歴任し続けてる事を気にしているのよ」
小「人間って成長が早いわよね。少し前まで子どもだと思ってた子がもう大人だなんて」
小「あなたもいつの間にか大人になっているのかしらね?」
忍「うるさいわね」
忍「…けれど、今年は時間が掛かりそうだわ」
小「どうして?」
忍「舞いを担当する家系が幾つかあるのは、受ける側だったあなたも知っているわよね」
小「そうね、
忍「よく覚えているわね。ともかく、そんな家の何れにも適齢の女性が居ないのよ」
小「あらら」
忍「それで、話が纏まらなくて平行線って訳」
小「なるほどね。もういっそ四王寺ちゃんがそのままやればいいけれど…」
忍「残念ながら、彼女が退いたのは彼女の意思に依るところが大きいのよ」
小「それは寂しくなるわね」
忍「それで、今現在一つだけ案があって」
小「あら、何か策はあるのね」
忍「…でも、それは多分、さすがのあなたもいい顔はしない方法よ」
小「んー…」
小「…ちょっと待って」
小「それって………」
忍「…今、祭ヶ原家に適齢の男性が居るわ。あなたも以前に出会った彼よ」
忍「彼に、その舞いを」
小「それはいけないわ」
忍「小折………」
小「いくら人が居ないからって、男の子に任せるのは…夏会の習わしにも書いてあるでしょう?」
忍「そうね。私やお母様もそうならないように話し合いを進めているわ。この先は慎重に話していくつもりよ」
小「それをお勧めする…いえ、そうして然るべきよ」
忍「………初めてね」
小「え?」
忍「私があなたと出会って数年になるけれど、あなたがそうやって本当に怒っている姿を見たのは今日が初めてよ」
小「え、そ、そうだったかしら…?私、そんなにいつもヘラヘラしていたの?」
忍「私が知っている夏野 小折は、いつもそんな感じよ」
小「あう…私そんなにお気楽に見られていたの?割と真面目に生きてきたつもりなのに」
忍「えっ」
小「えっ」
忍「…まあともかく、珍しく感情で私に意見をくれたあなたの為にも、私はもう少し話を進めてみるわ」
忍「そうするべきなのでしょう、小折………」
忍「いえ」
忍「…冷泉・フリージィ」
小「ふふ、久しぶりにその名前で呼ぶのね」
小「えぇそうよ。夏会の禁忌は今でも禁忌、私が住まう神社の人として、禁忌が侵されないように取り計らいなさい」
小「更月家には、私をここに置いた意味と、その責任があるのだから」
忍「畏まりました、旧き冷泉の神様。その直々の命、必ず果たして見せます」
小「………くふっ」
忍「………ふふっ」
小「あははっ!やっぱり長くお友達になりすぎたわね~、何だかすごく疲れるわ~!」
忍「ふふっ…えぇほんと。話してて違和感しか感じなかったわ」
小「じゃあ、締まらないお願いだけど、任せたわよ」
忍「えぇ、やるだけやってみるわ」
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