04

忍「冷泉」


冷「なぁに?」


忍「夏会が終わった人間の舞い手は、いつもその後で何をしているの?」


冷「何って…別に何も?」


忍「毎年、冷泉神社の夏祭りには、町の女性が一人選ばれて、冷泉の夏会なつのえという舞いを行う。そして、舞いを終えた舞い手は、神様と共に冷泉神社の秘殿に向かう」


冷「えぇ、何も間違っていないわよ」


忍「それで、その秘殿で何をしているのか、よ」


冷「特別な事は何もしていないわ。その人と神様がお話しをするだけよ。まあ何を話したのかは形式上他言無用になっているけれど、基本的には女の子同士の楽しいお話しよ?」


忍「そう」


冷「なぁに?もしかして、女の子同士で何か人には言えないことをしているんじゃないかって…想像した?」


忍「どうしてそう思うのよ。そうじゃなくて、冷泉神社の秘殿は、それを管理している更月家も詳細な場所を知らないから、何かあったときに困るってだけで」


忍「別に、そんな事は、これっぽっちも…」


冷「おやおや?何だか声のトーンが下がってるわよ?」


忍「そ、それにっ!」


忍「もし本当にそんなっ……事、を…しているんだったら!神社の管理をしている一族として放ってはおけないわ」


冷「もう、忍は考えが堅いのよ。舞いを踊る人だって色々いるのよ。それこそ純心で初な子だっていたわ」


冷「それで、他愛もない話をしていて色々と興味も芽生えてくる。そして、神様相手に自分の全てを見てもらおうと……」


忍「あーもうっ!!この話は終わりよっ!」


冷「ふふっ、そんなに慌てなくてもいいのに」


忍「第一…あなたはそもそもそんな経験がないでしょう?」


冷「んー?どんなけ・い・け・ん?」


忍「っ………!」


冷「そんなに睨まないでよ~。ほんと、忍を弄ってるのは楽しいわね」


冷「………でも、忍の言う通りな所もあるわよね。人間と交わってたら、今ごろ私はここには…いや、この世にすらいないかもしれない訳ですもの」


忍「冷泉………?」


冷「そう言う意味では、ここに閉じ込めてくれた更月家には感謝するべきなのかしら」


忍「ねぇ、やっぱりあの伝承は本当の話なのね」


忍「………人に堕ちた冷泉は、短命である」


冷「そう、だから私は先代から産まれることは出来なかった。先代は人間と結ばれ、人間になり、人間として死んでいったから」


忍「ねぇ…あなたの娘も、例外ではないわよね」


冷「そうね。冷泉の神様はみんな例外じゃないわね。試してみてもいいけれど、そうすると悲しむ人がいるからね」


冷「ねえ?」


忍「わ、私に行っているの?」


冷「さあ、どうでしょう?」

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