ルージュ・ドラゴン 〜悪しき真紅の龍〜

第31話 ディメンションバトル

 炎の装飾がほどこされた、赤いドレスが風でなびくと、ゆらゆらと波打ち彼女の情動を体現しているように思えた。


 宙を舞うディキマは、張り巡らされたパースを無造作に掴み引き抜くと、乱暴に投げ放つ。

 パース線の先は、道を走る乗用車やゴミの収集車と繋がり、真紅の髪を持つ悪女に投げ飛ばされる。


 クロトを抱え飛躍する蒼天よモルタを、乗用車が襲う。

 モルタは状態を反らし、車両を華麗に交わした。

 車を避ける際、ドライバーの悲鳴が耳をかすめる。


 続いて飛んで来るゴミの収集車も、同じように交わすと3台目、トラックは同じように交わすことはできなかった。

 投げ飛ばしたディキマは遠くで手をかざしトラックのパースを指で操作する。 

 

 するとトラックは空中でバラバラに分解、中にいたドライバーは投げ出され、地に落ちてに行く。

 

 分解され散らばったボンネットやシート、窓ガラス、タイヤ、パイプを突き出すエンジンはディキマの操作により組み換えられる。

 

 散乱する部品はそれぞれより集まり、いくつもの小型ミサイルに変形した。

 ミサイル達は炎の尾を引きターゲットに向かって行く。


 それを見たクロトは、興奮した猿のように、モルタの耳へ向けわめいた。


「ひぃいいいい!?」


「うるさい! ワシの耳元でがなるでない!」


 掴みかかる巨大な手を彷彿とさせるミサイル群を、モルタは避けきれないと判断したのか、クロトをお姫様抱っこから肩に担ぐと、彼女もパースを掴み地面に設置された、標識や植えられた木を引き抜く。


 蒼天のモルタは、パース線に繋がれた標識や木を振り、器用にミサイルへと当てる。


 青空に爆炎が広がり、鼓膜をつんざくほどの轟音が、空気を振動させた。

 黒煙の中、仕留めそこねた1基のミサイルが顔を出した。


 モルタは手をかざして線を放ち、操ろうとするが、ミサイルは蛇のようにうねりながら進み、パースの束縛を拒む。

 現にクロから見て、ミサイルのパースは角度が次々変わり、ニ点透視から三点透視、そしてまた二点透視へと戻っている。


 それこそ、蛇のように掴みどころかない。


 どうやら異次元人のパースは、蛇行する動きは捕縛出来ないらしい。 


 線による拘束を諦めた、蒼天のモルタは、両足を揃えるとスカートと、めくれ上がるのを気にせず揃えた足でミサイルの頭めがけて蹴り込む。

 

 ミサイルを壁の代わりに使い、その勢いで跳ね返ると、ミサイルは爆発。

 爆風に乗る青髪の乙女は、ロケットのように虚空を舞った。


 住宅地を抜け、高架の線路を後にすると、後方から乱雑な物音が周辺の大気を振動させる。


 乙女の肩に担がれたクロトは、後ろを振り向くと、先ほど通り過ぎた高架の線路が立ち上がり、その頂上には真紅のディキマが、手から線を放ち高架を釣り上げる。


 パース線は高架の線路を縫うように動く様子は、まるで無数のアリに糸を付けて、表面をせわしなく走っているようだ。


 作り変えられて行く高架は、表面が雪崩のように崩れ、厚みと色を削ぎ落とす。

 雪崩が過ぎると、表面が水飴のように溶け、流れが加速し滝となる。

 急流の中からあらわになったのは、尖端を下に向けた銀色の諸刃。


 高架の線路は、横幅が30メートル、縦が50メートルはあろうかいう巨剣に変異した。

 ゲームで見たことのあるバスターソード。

  

 クリエイターを目指すクロトには、興味深いオブジェだ。

 じっくり見たいところだが、今は研究意欲より、あの巨剣を振るわれる恐怖の方が勝る。


 2本のレールは真紅のディキマへ伸び、手を重ねるように絡むみよじれると、1本の太い柄を形作る。


 ディキマが太い柄を両手で掴むと、か細い腕で巨剣を軽々持ち上げた。

 ひし形の剣先が瓦礫を蹴り上げると、粉塵が周辺を覆い隠し、破片が雨のように降り注ぐ。

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