第29話 スレンダーマン

 目の前から、歩道を歩く小学生が近づいてくる。

 いかにも、明朗快活を描いたような、2人の男の子だ。

 ランドセルを背負った、通学途中の男の子達の会話は、いかにも未来っ子らしい内容だった。


「昨日、ネコネコ動画で怖いやつ見つけてさ」


「あ、俺も見た! スレンダーマンでしょ? アメリカのボインとフルチンを壊したやつ!」


 破壊された町、ポイントブレザントのことを言っているのだろう。


「そうそう! 手足がゴムみたいに伸びてて、大きさが3メートルか5メートルくらいあるんだって」


「見た人は呪い殺されるんでしょ? こえぇ〜」


 楽しく会話する、小学生達に水を刺したのは、他でもないクロト。


 クロトは大の字になり、小学生達の通学路に立ちふさがった。

 目の前に立ちはだかる、怪しい人物を目の前にして、2人の男の子はいぶかしげに見る。


 そんな、変出者を見るような目を向けるなよ。

 こっちだって、好きでこんな格好してるんじゃない。

 動きたくても動けないんだよ!


 さながら、金縛りか、弁慶の立ち往生。

 クロトは言い訳しようにも、口が強張り言葉が発せない。


 が、奇異な目を向ける小学生達は、言葉聞かずとも、クロトの身に起きたことを目の当たりにする。


 彼の手足はゆっくりと、ゴムのように細く伸びて行き、腕はきし麺のように、股下は橋のアーチのように広がる。

 身長が3メートル程に達すると、小学生の顔は恐青ざめ、パニックを起こして叫ぶ。


「「スレンダーマンだあああぁぁぁ!?」」


 小学生は背を向けて、駆け足で逃げていった。

 

 クロトを両端から引っ張るパース線は、激しく震えながら千切れると、クロトはゴムが縮むように収縮し、その勢いで身体が弾かれ彼方へと飛んで行った。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る