爆ぜる現実
第10話 青き稲妻の少女
刹那――――――――ペン先で撫でるように、空間に一閃が描かれ、クロトとディキマを繋ぐ無数の線が寸断される。
それは、青い稲妻が音も無く落ちたようだ。
クロトはその場に落ち、全身を強く打つ。
同じく、寸断された線におののき、ディキマは怯えるウサギのように飛び跳ね、後方に移動し、周囲を警戒する。
クロトは何が起きたか理解できず、辺り見回し確認した。
そこには、一糸まとわぬ少女が、背を向けて立っていた。
街灯に照らされた白い肌が、眩い光沢を放っている。
すらりと延びる足や太もも、細い腕は立ち上がった芍薬の花のごとく凛と美しい。
桃のような張りを感じさせる乳白色の尻もさることながら、目を引くのは常識外れの髪。
腰まで伸びる髪は、頭の先から肩の辺りが青く、腰にかけて徐々に薄く水色に変化したグラデーション。
淡水のように綺麗な髪は、街灯の光で輝いているのではなく、自ら輝きを放って暗闇を照らす。
しかも背中を隠す青い髪には、線で描かれた模様が中心から放射線状に広がっている。
まるで現実の空間とは違う、地平線がどこまでも続いているようだった。
裸の少女は、クロトと真紅のディキマとの間に割って入る。
これは、自分を守ろうと立ちはだかっているのか?
ディキマは青髪の少女を見ると、顔をしかめ嫌悪した。
同じ人外にしか見えない者同士、何かの因縁があるのだろうか、真紅の怪物は咆哮するように叫ぶ。
「モルタァァァアアアア!!!?」
夜の闇へ割れた声は聞き取りにくく、言葉の意味が理解出来ない。
真紅のディキマが片腕を通りな反対側へかざし、そのまま腕をゆっくり上げて行く。
すると通りの向にある、二点透視の線で繋がれた一軒家が、ゴムのように伸びて上へ上へと、発芽の成長のように登った。
更にディキマが空いた方の手をかざし、小刻みに指を動かすと、伸びた一軒家は次第にねじれていく。
気づけば、通りの反対にある一軒家は、巨大なドリルへと変貌する。
鋭く尖ったドリルの先端が折れ曲がり、青い髪の少女へ狙いを定める。
赤髪の女が腕を引くと、巨大なドリルは高速で回転しながら襲ってきた。
クロトの脳裏に、色白の肌を貫き、内臓をぶちまける少女の姿がよぎる。
だが――――――――青髪の少女は両方の手の平を顔の前に重ね、高速で回転するドリルを受け止めた。
茎のように細い腕で、ドリルの破壊力を抑えている。
クロトは目の前にの光景が信じられなかった。
あまりにも現実離れたした景色に、裸体の少女もドリルも幻なのではないと思う。
しかし、目の前の光景は紛れもない現実だった。
少女がドリルを受け止める手を下にずらし、ドリルの先端を地面へ押し流した。
すると一瞬、火花が弾け、ドリルはコンクリートの歩道を激しくえぐり、硬い地面を砕く。
無数の破片が舞い上がり、こちらへ降ってきた。
ゴルフボール大の破片が、クロトの脳天を直撃し激痛が走る。
痛みが現実だと思い知らせた。
どさくさに紛れ、青髪の少女はクロトを抱えて大きく跳躍する。
クロトの絶叫が夜空にこだました。
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