第1話 狂源郷の入り口
「シキさん!シキさん早く!早く起きてくださいよ!」
「ん、がふぁっ!いってぇな!何すんだよミシアまだ朝だぞ!」
シーツを引っ張られたおかげで床に落ちて、頭を打った。
「それはこちらのセリフです!もうお昼です!早く起きて!」
だるくて重い体をなんとか起こしうっすらと目を開ける。
可愛らしい鳥の声に朝食のいい香り…ではなく市場の騒がしい声に何やら焦げ臭い匂いがする…
「あぁ、すまん時計壊れてた。それよりもなんか焦げ臭いんだけど気のせいですかねミシアさん?」
いや、聞かなくても答えはわかっているが、間違ってたら酷い目に合うので一応聞いておく。
「え、あ、ほんとだ。パン焼いてる途中だったんですけどタイマーかけたと思うんですけど…」
「ちなみに何色のボタン回したんだ?赤色はタイマーだが青色は圧力かかるやつだぞ。」
「…」
黙るミシア。凍てつく部屋。焦げ臭い匂い。
「早く止めてこい!圧力の調整ミスってたらこの部屋全部吹き飛ぶかもしれないぞ!早く止めろ!」
「は、はい!すぐ止めます!」
小動物のように小走りで止めに行く。俺はこの部屋が無事であってくれることを祈って顔を洗い、髪を整えてからキッチンへと向かう。この生活にもだいぶ慣れてきた。命の安全と引き換えに自由を奪われたがまあいいだろう。というのも俺は記憶を失っている。記憶を失う前に何かしでかしたらしく罰として2年間謹慎することをになっていたらしい。新上シキ。現在の年齢は17歳。ごく普通の人間。
「ふー危ないところでした…」
かなり焦っていたのか、肩より下くらいまである茶髪で長い髪を扇風機の風でなびかせながら涼んでいる。ご紹介遅れたが彼女はミシア。年齢は16歳。いたって普通の人間。というわけではなく。地球という俺たち人間が住んでいた世界が崩壊寸前だったから、こっちの神が治める国に移り住んで日々悪魔退治やら何やらを手伝っているそうで、割と階級が上の方らしい。
「んで、一体何の用だ。よくわからないが俺は謹慎三か月とかなってたんだろ?その、えーと神様連合とかいう奴のせいだったっけ?」
外に出られないとは言え、ぶっちゃけ食料や生活必需品などはこのミシアが全て取り揃えてくれていたのでむちゃくちゃ楽だったのでこの生活は嫌いじゃない。
「全然違います!神皇退魔契約団ですよ!私が分隊長をやっているところの!それくらい覚えてくださいよ!」
そういって腰に手を当てて睨んでくる。いや、しょうがないじゃん!そんな怪しい団体聞いたことないもん!まず、外にも出たことないもん!
「あーはいはいすいません。で、何の用だ?食料等は昨日持ってきてくれたばかりだし、特に問題も起こしてないぞ?」
「実は先日、この国を治めていた特級天使のロセル様が敵陣で死去なされたんです。すると、新しくこの国を治めることになった特級天使のザリス様があなたやその他の謹慎以下の罪を持つものはその罪を免除するとの通告がありまして…」
「はぁ?!天使適当過ぎんだろ!」
やっと折り返し地点まで来たっていうのになんと中途半端なことか…
いやまぁ外に出られるのは嬉しいけれども。
「てことではい!行きますよ!街に!」
「あぁ、わかった。」
正直、動揺を隠しきれない。突然手のひらを反すように罪を免除するなんてそうそうないからな…
今まで固く重く閉ざされていた木製のドアが手のひらで押しただけであっさりと開く。そして少しばかり成長した少年はまた一歩を踏み出す。
「ん?どうかしましたか?」
「あ、いやなんでもない。(デジャブっぽいのが今来た気がしたけど気のせいか…)」
やっと戻れた平穏な日常から少年はまた足を踏み出してしまう。一度は失敗し、絶望が待っていた最悪の結末へと再び足を進め始めた。
狂源郷の嫌われた天使 @amaki_sigure0608
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