第3章『それは才能と呼ぶには超え過ぎた能力』(7)
その後、落ち着きを取り戻した尋之君は、「取り乱してすみません、エントランスの方で頭を冷やしてきます」と告げると、ぼくらの前から立ち去った。
今、ぼくと大地は研究所の一室で、小ぶりなトランクケースのようなものを前にしている。
「……君も平気かな、空」
「さっさと大地が話を済ませてくれればね」
「ずいぶんと刺々しくなったものだ……まあいい。これを渡そう」
がちゃりと開いたケースの中から、大地は〝青い指貫グローブ〟のようなデバイスを取り出す。
「君の異能を制御するため、長年を懸けて研究開発したものだ。今、ここで装着してみるといい。すぐに分かる、ほら」
「…………」
黙って彼からデバイスを手渡してもらい、それを手に嵌めるが――
(なんだ、これ……っ)
「その機能は、君の〝能力操作能力〟を制御し、超過能力だけを抑制させることが可能になる……ただし対象は、超過能力者から無才能者になってしまうがね」
「……ぼくに、これを使って葉子さんを救えってことか」
「その通りだ。違和感が無いかな?」
「違和感だらけだよ。今までよく分からなかった力の使い方が、なんとなく分かるなんて」
「試してみるかい? なんなら実験用に、あの少女と同じ哀神を――」
「大地で試してやろうか?」
「……遠慮しておくよ。今日はすまなかった、色々と不快にさせてしまって」
連れてきた少年が揃いも揃って、自身に怒りの矛先を向けていることを気にしたのか、大地は手を合わせながら謝罪を口にする。
「葉子君の施術は、明後日の土曜日――夕方にしよう。明日は病室の移動があるからね」
「そう、わかった」
短く返事をして、施術の承諾をする。
こうしてぼくは、最低最悪の父との再会を終えたのだった。
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