第二章 9

9

 何をそんなにほくそ笑んでいるのか俺には分からなかった。

 少なくとも、酒を飲むまでは。

 グラスに注がれた酒は黄色をしていた。

 ハイボールみたいな。

 乾杯の合図と共に俺は酒を口に含んだ。

 酒は、口の中でパチパチと音を立てていた。

(なんか不思議な感じだな……)

 そして、酒を飲み干した瞬間──。

 身体が燃えるように熱くなってきた。

「熱っ……!」

 それは、俺だけじゃなかった。

 デイビッドも、メディアもアンリも、床を転げ回っていた。

「え、エドワード〜。なにこれ……熱いよ〜……」

 俺はまたロイスを見た。

「ッ……!!」

 ロイスは俺を見下すように立っていた。

 目が合うと、またにやりと笑った。

「おやおや……。お客様、どうされましたか。美味しさのあまり床に倒れてしまったのですか。フフフ……。そこにはちょっとした毒をイレテオキマシタ。しばらくは起き上がれませんよ」

 くそっ……これじゃあ明日ここから脱出できないじゃないか……。

「ここから脱出しようなんて考えてたあなた方が悪いんですよ……?」

 お見通しだったのか……。


 そのまま俺は気を失ってしまった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る