第二章 6

6


 俺は他にもこの館から脱出するヒントになる本はないか探してみた。

 ドンドンドン!

 未だに部屋の扉が叩かれているが、そんなの関係ない。

 今はここで多くの知識を得ることが最優先だ。

「「「アケテクダサイヨ。コンヤウタゲデスヨ」」」

 宴?そんなので俺は釣れないぞ。

 本棚を漁っていると、一冊の日記帳が出てきた。

「アルベルト・シャルマン……。誰だ……?」

 そこにはこう書かれていた。


 6月24日

 私はシロツメ荘という建物に囚われた。

 時間が全く進んでないようでおかしな感覚だ。


 6月25日

 シロツメ荘を探検していたら、何やら書庫のようなものを見つけた。

 一冊、興味深い本があったから頂戴してきた。


「興味深い本……」


 6月26日

 フロントにある時計をこっそり分解してみた。

 ここの住人に見つかって部屋に閉じ込められたが、中から鍵のようなものが出てきた。

 住人たちは鍵がないと騒いでいる。


 6月27日

 昨日時計から出てきた鍵が出入口の鍵穴にはまることを確認した。


 6月28日

 今日は人生で1番走った日だ。

 なんとかシロツメ荘から脱出できた。


 日記帳は6月28日で止まっていた。

「続きはないのか……」

 ぱらぱらとページをめくっていると、再び11月23日に書き記されていた。


 11月23日

 再びシロツメ荘に戻ってきた。

 だが、数ヶ月前とは違う。

 囚われの身ではなく、ここのオーナーとして、だ。

 私自身も、ここに囚われたから苦痛は分かる。

 だから、この日記帳を見つけた者にここから脱出させてやりたいと思う。

 ここに館からの脱出方法を記しておく。

 是非とも脱出を成功させてくれ。

 幸運を祈る。


「早くしないと」

「あの日記と本を見られる」

「大丈夫よ……多分」

 何やら外がソワソワしている。

 もしかして……本当にここに書いてある手順を踏めば脱出できるっていうのか……?

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る