第一章 8

「よかった、アンリ見つけられたんだな」

「え、ええ。でも、なんで3人とも別々の方向に走っていったのにここに集まってるのかしら……」

 ここは3人で決めた待ち合わせの場所ではなかった。

 では、なぜ?

 その疑問はアンリの発した言葉で解決した。

「エドワード~……みんな~……あ、あれ……なに……?」

 アンリに指の先には大きな建物があった。

「「「まさか……」」」

 俺達が建物を見つめながら硬直していると、中から女性が出てきた。

「あら。どうかされましたか?今夜お泊りのお客様ですか?」

「い、いえ。違います。ただ偶然ここを通りかかっただけです。すみません、すぐ帰ります」

「でも、もう暗いですし、今夜はお泊りになってはいかがです?」

 女性はそう言うと、俺達を建物の中へ押し入れようとした。

 女性が扉を開けると、中からお肉の焼けたいい匂いが漂ってきた。

 すると、欲望に負けたバカなデイビッドが我を忘れて中へと入っていく。

「おい!デイビッド!」

 俺はデイビッドの元に走ったが、もう無駄だった。

「ここに来たくなかったのなら、森に入らなければ良かったのに……」

 女性はボソッと呟いた。


 ああ……。もうこの森に入った時点で未来は決まってたんだ。


 俺は軽率だった自身を恨んだ。

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