合縁奇縁。カレーと私

 幼い頃の私はカレーが好きだと嘘を言った。

 母の作るカレーは二者択一。

 酷く濃い、か、殆ど水。


 舌の上で傍若無人に振舞う、か。

 舌の上で蠢く様にはい回る、か。


 保育所で出されるカレーは甘過ぎて。

 幼稚園で出されたカレーは美味しくて。

 小学校で出されたカレーは味ッ気がなく。

 

 家で食べるカレーは名状し難く。


 私の中でカレーとは旨い、か、不味い。

 その二者択一で。

 本音を言えば嫌いでも好きでも無かった。


 中学生。


 海上自衛隊の体験入隊で。

 私は金曜日に運命と出会った。

 これこそが私の愛する存在だ。


 舌の上でスパイスが。

 舌の上でブイヨンが。

 舌の上で隠し味が。


 真っ白な米と出会って愛し合う。

 

 それ以来、私はカレーを愛する様になった。

 元々は。

 カレーはそこまで好きでなかったこの私が。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る