カレーを謡う

以星 大悟(旧・咖喱家)

一期一会。カレーにも当てはまる。

 最初の一掬いは如何にするか。

 大まかに分けて二通り。

 銀の匙で一気にカレーを食べる電撃作戦か。

 一度氷水に浸してからカレーを食べる鉄床作戦か。

 

 こだわりは人それぞれ。

 しかし肝心、要は目の前のカレー。

 私は決して氷水に浸さない。

 

 理由は明白。

 僅かな水分でもスプーンに付着していれば味が薄まる。

 そんな事など私には認められない。

 

 何よりカレーは何時も同じとは限らない。

 

 湿度の関係、その日の天候、自分自身の体調。

 その度に感じる味はほんちょっぴりでも変わってしまう。

 何よりその日の気分だ。


 気分上々なら味も上々。

 落ち込んでいるならその辛みが目に染みる。

 

 故にカレーにも言える事だ。

 

 カレーもまた一期一会。

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