第7話

何もかも終わった。



『いやいや、まだ何も始まってないだろ。』



桜からの嫌い発言を聞いた後、俺はどうにか帰宅して、協力者の里谷に電話をしていた。



『お前、幸運ラッキーなのか不運アンラッキーなのか分からねえな。』


「笑うなよ…。俺これからどうすればいいのか分からないんだけど。」


『ネガテイブだなぁ。きっかけが出来たんだから、あとは距離を縮めるだけだろ!』


沈んでいる俺に里谷は明るい声をかけて慰める。


「だから、その方法が分からないんだってば。嫌いって言われたんだぞ?もうなかなか話しかけられないよ。」


『もう諦めるのか!? お前の須藤さんへの気持ちはそんなものなのかよ!』



何こいつ熱血教師っぽく言ってんだよ……。


『…方法はそうだなぁ。 まずはなんで嫌われてるのか知らないと対策も打てないよな。 前に身に覚えないって言ってたけど本当か?』


「そりゃ小さい喧嘩なら今までたくさんしたことあるけど、その度に仲直りしてたしな。こんな訳分からないの初めてだよ。」



『まあとりあえず、オリエンテーションの案考えるの頑張れよ!本当に須藤

さんだけに任せたとなったら更に嫌われるかもだし。』


笑いながら言う里谷に嘆息しながら、電話を切った。



よし。

うじうじしてても仕方ないから、桜のことは一旦忘れてシャワー浴びてから案考えよっと。




次の日の昼休み。


桜と2人、向かい合い始めて5分。

そろそろ沈黙がつらい。


どうしてこうなったかと言うと今日の朝まで話は戻る……。





「おはよう!」


「あ、榊おはー!」

「榊、おはよっ!」


まだ高校が始まって4日しか経っていないのに男女問わずから挨拶が帰ってくる。


俺のクラスは、個性はそれぞれあるがほぼ全員ノリがいい奴なようだ。

1人を除いては。



「桜、ちょっといい?」


カバンを自分の席に置き、静かに本を読んでいた桜に声をかける。


少しだけ本から顔を上げた桜は無言のまま見つめ返してくる。まるで視線だけで早く要件を話せと急かされているようだ。



「いや昨日のことなんだけど。オリエンテーションの内容を桜が考えてくるって言ってたけど、一応俺も考えてきたから話したいなぁって…。ダメ?時間ない?」



桜に話しかけるだけで緊張する。

それでもなんとか焦る気持ちを抑えて桜に聞くと、予想に反して返事が返ってきた。


「昼休み、屋上でなら。」


視線は逸らされていたが了解はしてくれた。


「おうっ!」


嬉しくなり、ついつい俺は大きな声で返事をしてしまい桜に睨まれてしまった。


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サクラいろ しゃの @nanana1230

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