第6話

「それじゃあ早速、残りの委員会とか係とか決める進行は、学級委員の2人に任せますね。」


お願いねー!と言いながら、先生は教室の空き机でパソコンに向かって他の仕事に手をつけた。



「ほら前出ろよ、学級委員!」


そう言って里谷は俺の方を軽く叩いた。


30人近いクラスメイトを前に、緊張しながらも俺と桜は教卓の前に立つ。



「私黒板に書くから、徹が進行して。」


俺にしか聞こえないような小さな声で桜が言った。


「じゃあ先生に代わって委員決め進めていきたいと思います。まずは、図書委員。なりたい人いる?」


桜にうなづいてから、クラスメイトたちに聞いた。それからは順調に委員は決まっていった。

そして委員決めはHRが終わる前に方がついた。



が、しかし……。


「悪いけど、学級委員さんにしてほしいことあるから、放課後2人とも残ってもらえる?」


こうして少し桜に近づけた1日も、先生の一言で延長されることになった。




「オリエンテーションでしたいことね……」


先生が言ったやってほしいこととは、再来週にあるオリエンテーションでみんなの仲が深まるような企画を明日までに考える、というものだった。



「やっぱりゲームとかの方が楽しくていいのかな?みんなの参加意欲上がるだろうし。」


「………。」



企画を考えているのか、俺と話したくないのか、桜は放課後になってからまだ一度も声を発していない。


ずっと無言の桜に話しかけている状況にやりづらさを感じ、俺は入学式の時からの疑問を桜にぶつけた。



「俺、桜になんかした?」



紙に向けていた視線が俺をとらえる。


「桜、俺のこと嫌いなの?」


少し声が震えた。俺ダサいな。



十何分にも思える長い数秒が経った後、小さな声が聞こえた。


「……嫌い。」


「え。」



綺麗な桜色の唇で紡がれた言葉に、今更ながら動揺した。



「私徹のこと嫌いだよ。」



嫌われてるかもとは思ったが、桜からはっきりと言われ、何も考えられなくなった。


「……なんで?」


「別にどうだっていいでしょ。企画は明日までに私が考えとくから。」


そう言い残し、桜は放心している俺を置いて教室から出ていった。

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