第4話

彼女の名前は須藤すどうさくら


彼女とはどこにでもいるような幼なじみだった。家が近くて、同い年、親同士も仲が良かった。小さい頃は毎日のように彼女と2人で遊んでいた。

しかし、小学校卒業と同時に彼女は引っ越してしまった。



それから3年、何も連絡はなかった。




そして今日久しぶりに会って話して、桜は変わっていた。

冷たくて人を無視する彼女を、俺は知らない。




昔の彼女は優しくて、明るかった。小さい頃から美人で、成績も運動神経もよかった。

しいて欠点を上げるなら、頑固で喧嘩っ早いことだった。だがそれも、正義感からくるものでよく弱い者を助けては感謝されていた。


いつも、みんなから慕われていて人気者。隣にいる俺も誇らしかった。




そしていつのまにか、桜への気持ちはそれだけでは済まなくなっていた。


長時間ずっと一緒にいたことによる、情だけではない想いが確かに存在した。

初恋だった。



離れていた3年の間に、彼女に何があったのだろう。

そして俺に話してくれる日は来るのだろうか?





ある程度、桜のことを里谷に話した。



話してる間、今日初めて会った奴に何ベラベラと話しているんだろうとも思ったが、迷惑をかけたのだから仕方ない。



「本当にそういう関係ってあるんだな。俺、幼なじみいないからよく分からない。そういうの漫画の世界だけだと思ってたし。」



「そっか… 本当にごめんな、こっちのことで迷惑かけて。」



「いや、それは……」



里谷が何か言いかけたところでチャイムが鳴る。あれ、いま何時だ?



「おい、時間やばいぞ! 早く教室帰らないと。」



階段を全速力で走り降り、急いで入った教室には、すでに俺たちの担任であろう先生がいた。



「もう、やっときた。初日から遅刻なんていい度胸ね。」


「「すみませんでした。」」


里谷と2人、声を揃えて謝罪した。


「次はないからね?」


若い女性の先生は、俺たちに優しく微笑んだ。だが、目が笑ってない…。

この人、怖い……。




「全員揃ったので体育館に向かいましょう。出席番号順で廊下に並んでね。」



廊下に出て並ぶと、里谷と前後になる。すると里谷が声をかけてきた。



「さっき言おうと思ってたんだけどさ、俺迷惑に思ってないから。」


「え?」


「須藤さんのこと。 お前の初恋、叶えてみるってのはどうよ? まだ好きなんだろ?」



何言ってんだこいつ……

少しニヤつきながら里谷は言葉を続ける。


「それに、どうせなら須藤さんの笑った顔見たいんだろ?」


「まあ、そうだけど…」


「じゃあいいじゃねえか。俺、お前らお似合いだと思ってるし。 勝手に応援してるからな!」




勝手に応援って……

なんて強引なんだ……

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