第3話 ボクたち事件現場を見に行く

 次の日、朝から少し騒がしくなっていた。

 ラジオ体操に行くため近くの公園まで行ってみると、大人の姿があまりなかった。

 子供に交じって町内会の人たちもいるのに、大人は二・三人しかいない、いつもはもう少しいるのになぁ。


 ラジオ体操が終わって、帰ろうとしていると。

「ミっちゃん」

 健太と俊だ、ボクのそばまで来てコソコソと話をしだした。


「昨日の川原に居た人たちが居なくなったらしいよ」

 川原? あのキャンプの柄の悪い人たちかな?

「川原の人たちって、あの騒いでた? 帰ったんじゃなくて?」

「そうそう、テントも道具も車も、置きっぱなしらしいよ」


「それにね……」

 二人は、ちょっと渋い顔をしている、そしてさらに小声で話し出した。

「それに、おじさんたちが話してたのを聞いてたんだけど……、『虻干様』の石碑が壊されてたんだって、周りには缶ビールとかゴミが散らかってたらしいから、あの人たちだと思うんだ」

「――! んんっ、え?」

 びっくりして大きな声が出そうなところを、無理やり我慢して聞き返した、だって、石碑が壊れた? あの人たちが荒らして壊した? えぇ?。


「とりあえず、ぼくもケンちゃんも昨日の事は黙ってるから、ミっちゃんも知らんふりしといて」

 俊がそんな事を言って来たけど、ホントに関係ないし。

「あ、うん、忘れとく」

 ボクの返事を聞くと、健太がニヤリと笑って。

「OK、んでさ、この後、川原に行ってみようと思ってるんだけど、一緒に行く?」

 俊も、ウンウンとうなずいている、どうしようかな、ちょっと興味もあるけど。

「あー、うん、じゃ、見に行こうか? 一度家に帰ってから」

 そう返事をして、待ち合わせ場所を決めて、ボクたちはそれぞれ一度家に帰って行った。


 待ち合わせの場所に着いたら、健太と俊はもう待っていた。

「おー、ミっちゃん来た来た」

「あれ? クロもいっしょ?」

「そう、クロと散歩しに行くって言って出てきたからね」

「ワフッ」

 俊が、クロを撫でまわしている、クロもうれしそうだ。

「じゃ、さっそく行こうぜ」

 健太が元気よく言うと、ボク等は川岸に向かって歩き出した。


 川岸には、数台のパトカーが止まっていたり、黄色いテープが張られていたりしたけど、そんなに人はいなかった。

 まぁ、テントとかが置きっぱなしになってるだけだしね。


「やっぱ、ここはあんまり人が居ないな~、居なくなっただけだしね」

 健太が残念そうに言う、それを聞いて俊がちょっと心配そうに。

「んじゃ、やっぱあそこも行ってみるの?」

「んー、そうだねー、行ってみるか」

 まだどこか行くつもりらしい、ボクは聞いてみることにした。

「どこ行くのさ?」


「『虻干様』のところ」

 俊が嫌そうに答えた。


 **********


 結局、ボク等は『虻干様』のところまで行ってみることにしたんだけど。

「あー、やっぱり近づけないね」

 ボクも、ちょっと興味があったんだけど、『虻干様』がある森の道の手前で、入れないように警察の人とかが居た。

 町内会の人とかも話を聞きに来ていたようだ。

 案の定、ボク等の姿を見つけると、「子供は帰りなさい!」と怒られた、大人ならいいのか? とか、思ったのは内緒だ。


 正直な話、クロが先に進みたがらないのもあるんだ、きっとクロは嫌な予感がしてたんと思う。

 クロの様子を見て「忍び込もうか?」って言ってた健太も、あきらめたくらいだ。

 そんなわけで、ボク等はすごすご帰ることになった。


 健太と俊と別れてボクが家に帰ると、爺ちゃんが近所の人と話をしていた。

 近所の人たちに挨拶をして、家に入ると婆ちゃんがボクに話しかけてきた。

「ミっちゃん、これからしばらく、あまり外に遊びに行かないようにね」

「え? なんで?」

「うーん、あんな事件があったから、犯人もまだ捕まってないでしょ、外に行くときは家の人と一緒にね」


 あんな事件? たぶん知ってる。


「あんな事件て?」

「なにかねぇ、キャンプに来てた人たちが行方不明になったらしいの、それでね『虻干様』が壊されてたみたいだし……何かあったら大変だからね」

 婆ちゃんは心配そうな顔をしている、ボクは「うん」と返事をしておいた。


 茶の間で、婆ちゃんが入れてくれたジュースを飲んでいたら、爺ちゃんが入ってきた。


「ミツル、明日からクロの散歩は爺ちゃんと行こうな」

 爺ちゃんは、ボクがクロと散歩するのを楽しみにしてるの知ってるから、無理に止めさせようとしないんだなって思った、もちろん爺ちゃんと一緒に散歩に行くのも嫌じゃないから。


「うん、わかった、犯人早く捕まるといいね」

 ボクは、そう返事をしておいた。


 この日は、父さんと母さんも早く帰ってきた、仕事は休めないけど、なるべく早く帰って来てくれるらしい。


 その夜、ボクは寝ながら考えた。

 キャンプをしていた人達はどこに行ったんだろう?

 『虻干様』にイタズラしたから、祟られてどこかに連れて行かれたんだろうか? 『虻干様』は、まだ居るのだろうか?

 『虻干様』は、どこに行ったんだろうか?

 『虻干様』は、どこに居るのだろうか?

 『虻干様』は、どこに行くんだろうか?


 ボクは、そんな事を考えながら、いつの間にか眠ってしまった。

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