第4話 水底に潜むモノ

 川の幅は広く、その巨体を隠すには十分の広さがあった。

 だが、深さがどう考えても足りていない。


 それにも関わらず、は川底に影のように身を潜め、水面に毛ほどの気配を晒してはいない。


 ボゴッ


 その大きな口から、何かを吐き出す。

 の腹に収まっている、哀れな犠牲者の服の切れ端、そして安物のアクセサリ。

 服の切れ端は、川の流れにユラユラと漂い流れ、安物のアクセサリは川底に沈んでいく。


 は考える。

 久しぶりに外に出て、たらふく餌を喰らったと思ったら、腹のこなれが悪い。

 思えば妙な臭いもしていた。

 妙なモノも付けていた。

 肉と血の味に夢中になっていたが、今思えば大してうまくもなかった。

 腹が減って仕方がなかったとはいえ、ろくな物ではなかったようだ。


 ゴボッ


 何度目か、大きな口から異物を吐き出す。

 体の調子を戻すのに、丸一日かかった。


 今度は、子供がいい。

 やわらかい臭みの無い肉を喰らいたい。


 水底から、夕映えに生える外を覗く。

 川辺の道に、影が見える。


 は、体の厚みを増していく。

 夕陽にきらめく水面に、ゆっくりとその顔を出していく。




 長年閉じ込められ、その力を削がれている。

 あぁ、そうだ、もっと喰らい力を付けねば。

 我、母の様に。

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