第33話 兎人族との闘い

 氷精霊族を、252人全員、氷ノ山からサイレイ国に移住させるのに一月かかりました。

 根気よく回復させて、空輸に耐える体力をつけさせるのに、其れだけ掛かった訳です。

 100人程は即移動出来たのですが、後の150人は衰弱が酷く、その内の50人は瀕死の状態でした。


 中でも、ミイラの如く痩せ衰えた、スノーラちゃん達3人の子供は、緊急を要す極めて危険な状態でした。

 毛布にくるみ、そっと空輸し24時間体制の治療が施され、一命は取り留めましたが、1ヶ月経った現在、未だ3人ベッドから起きる事が出来ません。


 戦いには不向きな氷精霊族です、鮮魚や生成肉の冷凍に携わって貰った結果、彼ら彼女らは生き甲斐を見出だし働いてくれて居ます。


 氷精霊族の問題が落ち着いたので、兔人族の調査に取り掛かる事にしました。

 樹海深く分け入り、兔人族を探します。


「おーーい!わしは、サイレイ国王サイレイ-ライ、兎人族の代表者と話がしたい!!」

「··········」

「··········」

「わしは、争う気は無い!」

「兎人族に損の無い話しだ!、代表者と話をさせてくれ!」


 隠れて居て見えませんが、兎人族は居るようです。

 返事は無く、代わりに四方から矢が飛んで来ました。

 ヒミコが苦もなく、くいっと猫招きで矢を反らします。


「人と話したく無いなら、今度狼人族を連れて来る」

「今日はこのまま帰るが、代表者には伝えといてくれ!!」


 兎人族の姿も見ぬまま、全く収穫無くスゴスゴ帰るのでした。


 この時点で、兎人族に交渉の価値の無い弱者認定されたと、気付くはずの無い二人でした。

 この時平和ボケの二人でなく、普通の常識を持ったこの世界の住人の同行者が居れば、この後泥沼化する戦闘は回避出来たかも知れませんが、平和的会合を望んで出向いた二人に、攻撃されたらそれ以上の力を見せ付けて、ねじ伏せるなんて出来るはずがありません。

 人族に虐げられ、サイレイに僅な望みを託し、頼って来た他の土人達と違い、大きな集団を維持し、人の集落を襲い搾取出来る力を持った兎人族、人族を侮っては居ませんが強者とも思って居ない彼らです。

 不幸なすれ違いで済まない、残念な出来事ではありました。



「ガルダ中隊長、兎人族の接触に失敗した、悪いが部下一人連れて説得に行って呉れるか?」

「交渉事ならルデフが適任だが、二人では危険と思われます、矢を射って来たとか」

「大軍で押し掛けると、敵視されて交渉が困難に成るでしょう」

「そうでしょうか?ライ様に矢を射掛けて来た時点で、既に敵対行為と取れます」

「隠れ住む兔人族の領地に勝手に侵入した、わしが悪い」


「ライ様!!お人好しが過ぎます!!!

 兔人族は、私達土人とは全く違います!!

 奴等は、親姉弟人妻とか関係無く、繁殖行為を繰り返し、大勢力、数の暴力を持って、他から搾取するのみ、唯一生産的な行為は子作りのみのダメ種族です。

 関わらず、攻めて来たなら皆殺しにするのが得策です」


「ガルダ!!余りにも乱暴な意見だな!!」


「お言葉ですが、ライ様達を殺す気で攻撃して来た兔人族を、返り討ちにしなかった事で、既に交渉は不可能です!!

 戦いも出来ず逃げて行く、弱い奴の意見は不用、そう思う種族です」


「しょうが無い、明日もう一度ヒミコと説得に行ってみる」

「それは、お止めになった方が無難です!!!

 仲間にしても、恩を仇で返す奴らです、何も利益が在りません!!!

 それ所か、未来永劫タカられますよ!!!

 そう言う、どうしようもない者達は何処にでも居るでしょう?」


「··········居たな!前世の特定3国とか」


 対処に迷ったまま、朝になりました。

「やられたぁーーーっ、放牧羊が全滅だぁ!!!」

 モタモタしている間に、被害が出ました。

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