第32話 新しい仲間

「ヒミコ、記憶が曖昧なままなんだが、お前と一緒に転生できてほんとに良かった!」

「落ち着いたら、この世界一緒に見て廻りたいもんだ!」

「じいちゃん、一緒に見て廻れたら良いね!」

 遠くの、山を観ていたじいちゃんは、気付いて居ませんでしたが、ヒミコはその時哀しそうな顔をして居ました。


 この辺り一帯、春になれば花畑になり、蜜蜂が飛び交うのでしょう、蜂の巣箱が点在する、広大な養蜂地帯になって居ます。

 わしは、猫又変化したヒミコと二人で、リイナイ国のはずれ、年中氷で被われている「氷ノ山」を眺めて居ます。

 珍しく晴れ渡った早朝、氷ノ山連峰の中心、険しい氷ノ山がくっきり朝日に映えています。


「ヒミコ寒くないか?」

「裏起毛の防寒着着てるから大丈夫!」

「大丈夫なら、ちょっと飛んで調べるか」


 ヒミコは猫又変化すると、空も飛べるが、猫だけに凄く寒がりです。

 二人は雪土人が住むと言う、氷ノ山を調べるため飛び立ちました。


 氷ノ山連峰、今日は吹雪いて居ません、絶好の偵察日和です。

 雪と氷に覆われた、一際高くそびえる氷ノ山を、何度も繰り返し飛び回り調べたが、何も怪しい所が見つかりません。


「今日はここまでにして、帰るか?」

「じいちゃん?怪しい氷穴が所々あるけど、調べないの?」

「えっ?穴がある?」


 ヒミコに指摘され目を凝らすと、今まで何故気付かなかったのか、如何にも縦穴式住居と言った感じの穴が数ヶ所在りました。


「じいちゃん、あれって認識障害が掛かってる!」

「流石ヒミコ、よく気付いたな!わし一人だったら騙されて帰る所だった」

「怪しいね!降りて調べるか!」


 適当な氷穴に入ります。

 氷付いた洞窟を想像していたが、少し奥に行くと氷も無くなり、寒さもあまり感じなくなりました。

 快適とは言えないが、防寒着着てたら凍死する事は無さそう。

 突き当たりは、かなり広い空洞になって居ました。


 ヒミコがツンツン突ついて来て。

 小声で「じいちゃん!雪男が居る!見えない?」


「わぁーーわしら何も悪さしてねえだ!!」

「静かに人知れず隠れ住んでるだけだよって!!」

「たっ、助けてくれろ!!!」



 ▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽


 ある朝、ついに恐れていた事が起こっただ!!

 人と思われるが、空を飛ぶ不思議な者が、山の回りを飛び回り、わしらを探してるだ!

 兎族の悪さ、わしらのせいにされてるだぁよ!

 討伐されるだ!!!


 悪い事は重なるだよ!!

 今日に限って晴れ渡った空!丸見えだぁよ!

「大丈夫だぁ!認知阻止が効いてるだ!」

「ダミーの巣穴もいっぱいこしらえただ!!」

「じっとして、息をころしてやり過ごすだ!!」


 何か特別の力でも持ってるのか、いっぱいある巣穴の中、よりによってここに一直線にやって来るだ!!

「もうダメだ!せめて子供達だけでも奥に隠せぇ!!!!!」


 全員息をころして、認知阻止を目一杯纏い、へたりこんで居ます。

 人間の子供と、何族か不明の獣耳の少女が入って来ます。

 獣耳の少女と目が合っただ?

 人間の子供に教えてるだ!!

「··········もうダメだ!見られてる!!!」


「わぁーーわしら何も悪さしてねえだ!!」

「下で悪さしてるのは、兎人族とじんぞくだぁよ!!」

「わしら無害な雪土人だで!」


 △△△△△△△△△△△△△△△△△△△△



 話して分かった事は、食料を奪って居たのは、氷ノ山の麓の樹海に住む兎人族だそうで、繁殖力旺盛な兎人族から追われ、氷ノ山の上へ上へと追いやられ、ついに頂上付近しか居場所が無くなったのが、雪土人の種族だそうです。


 今でこそ雪土人などと呼ばれて居るが、元はドワーフやエルフ達と同じ精霊族で、特種水精霊の氷精霊術と風精霊術が使え、認知阻止能力は永く隠れ住んで居る内に、身に付いた能力だそうです。

 決して寒い所が好きな訳では無いそうで、サイレイ国に帰化するよう進めると、涙を流しながら、喜んで居ました。因みに暑い所も大丈夫だそうです。


 過酷な暮らしの為、総人口は252人。

 樹海に住んでいた頃は1000人以上いたそうです。

 逆にこんな所で250人、よくも生きて来れたものと感心します。


 緊急食料支援の為、ヒミコにはこの場に残り、事情徴収の続きを頼み、わしは、皆の所へ飛び立ちました。



 エルフ航空部隊に、食料と戦闘メイド隊を空輸してもらい、作ってもらった、緊急炊き出し暖かい団子汁を暖かくなった洞窟内で、雪土人改め氷精霊族達は、泣きながら食べて居ました。

 雪土人より氷精霊族の方が相応しい呼び名と思い、以後その様に呼ぶ事にしました。


 雪と氷に閉ざされた山の頂上、録な食料有るはずもなく、一族は慢性的に栄養失調、空輸移動に耐えられそうも無い人達が半数以上も見受けられます。

 国防軍に、入隊希望者を募ると小さな子供まで、是非入隊させてほしいと目をキラキラ輝かせ、言って来ました。

 まずは、確り食べて、体力つけてもらわないと。


 それより、真の盗賊兎人族の調査しないと。

 この場は戦闘メイド隊に任せ、ヒミコと調査に向かう事にしました。

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