第20話 一時の平和

 ブレイ家土人隊、第一部隊突撃!!


 武器を持たず、防具も着けて居ない、ボロを纏った狼獣人100人が駆けて来ます。

「狼獣人の皆さん、戦う格好だけして下さい!!」

「徐々に、独立部隊の後ろに行って、倒れる格好をして下さい!」

「そう!その調子!!!」



「ブレイ家弓兵隊、射て!!」

「土人兵共々射殺せ!!!」


 ヒミコの猫又変化で、矢は敵兵に向きを変えます!


「土人第二部隊、突撃!!!」

 同じく、ボロを纏ったエルフ達80人とドワーフ20人が走って来ます。

「エルフドワーフの皆さん、独立部隊の後方に退避!!!」


 ブレイ家の獣人、エルフ、ドワーフ達とは、打ち合わせしており、予定通り事が進みました。


 後は、ブレイ家を滅ぼすだけの、簡単なお仕事!!




 事の始まりは、旧ワルタ領の統治を進めるため、コウセイ家から、街道を進んでいた時の事です。


 突然ブレイ兵が現れ、

「此より先は、ブレイ家の領地!!サイレイは通行を認めん!!!」

 詰まらん嫌がらせを始めました。

 この街道が通れなくても、兵車で半日程遠回りになるが、其ほど不便は有りません。


「解った!サイレイ家とコウセイ家の名に懸けて、何人も通らんようにする!!!」


 コウセイ家、ジロスお祖父様の処置により、行商人も輸入業者も旅人も、誰一人ブレイ領を、訪れなくなりました。


 最近ワルタを滅ぼし、勢いを益すサイレイ家に、ちょっかいを出して、泣きを入れさせ、領地をぶん取ると、軽く考えていたブレイ家。

 思惑がハズレ、食糧危機が!!!


 鉱山はあっても、農地が殆んど無いブレイ領。

 コウセイ家や他の家から、食糧を輸入し、領内で採れる、鉄や銅の鉱石を輸出して外貨を稼いで遣り繰りしてきたブレイ家です。

 誰一人訪れなくなり、ブレイ家領内は大変な事になってしまいました。


 ここで、サイレイ家に詫びを入れれば、まだ許す気で居ましたが。

 ふざけた事に、宣戦布告して来ました。

 サイレイ家の兵は100程、ブレイ家は2500の兵を持っている!

 サイレイ家など、一捻りで滅ぼせる!!と思って居るのでしょう。


 相手より、強大な軍事力を持っていると、普通は少々強引な手を使っても、どうにでもなると思うよね!


 3ヶ月から半年は、持ちこたえると思ってたが。

 1ヶ月とは、食料品、結構自転車操業だったんだな。


 ブレイ家には、土人隊と称する兵が200名居るそう。

 こっそり此方に来るよう、説得を狼剣士隊に命じました。

 闇に紛れ土人隊と交渉した結果、独立部隊に入隊を夢見て、無血で此方に流れて来ました。





「ブレイ家!無礼を悔いて、謝れば許してやる!!!」

 ためを思って言ってやったが。

「ふざけるな!卑怯な手を使いやがって!!

 サイレイは許さん!!!滅亡させてやる!!!!!」


「えらく威勢の良いお兄さんは誰だ!わしは、サイレイ家当主サイレイ-ライ」

「小わっぱが当主?我はブレイ家長男ブレイ-モンである!滅ぼしたのは誰か、死ぬ前に、よく覚えておけ!!」

(プッ笑える!無礼者ブレイモンだって!)


 もとより、話の解る相手とは思って居ません!

 開戦の為の儀礼です。

 結果は見えて居ます、サイレイ家の領地がまた増えるだけです。


 先程此方に来た、狼獣人が心配そうに聞いて来ました。

「隊長様!!見た所40人程しか兵が居ないようですが、ブレイ兵は2000!!」

「大丈夫ですか?」

「安心して、見ていて下さい!」

「皆さんの同族が、武器を持って訓練すると、どれだけ強くなるか!!」


「とっとっまた矢が飛んできた!ヒミコ限界か?」

「第二小隊エルフ弓兵隊、射ち方用意!目標敵弓兵!!テェ!!!」

 1分足らずで、敵の矢は沈黙しました。

「射ち方止め!!」


「第三小隊、エルフ精霊弓兵、射ち方用意!目標敵指揮官!!テェ!!!」

 6人の敵兵が倒れます、勿論ブレイモンも。「射ち方止め!!」


「ブレイ家の兵に告ぐ!!投降するなら、今の内だ!!!

 10分待つ!!その間に戦意の無い者は立ち去れ!!」

「10分後ブレイ家は消滅する!!!」


 精霊弓兵の、パフォーマンスが効いたようです。

 火を纏った矢が、ビュンビュン飛んで来る!恐怖でしょう!!!

 セルとミルク、たった2人とは思えない、見事な連発攻撃でした。


「残り1分!!」

 千数百の兵が、武器を捨て逃げて行きます!!

 残った兵は、わずか300!


「第三小隊エルフ精霊隊!精霊攻撃始め!!!」

 3メートルの土人形3体、水人形3体、風人形3体、計9体の巨大ゴーレムが、敵兵に襲い掛かります。

(精霊攻撃、初めて見るけど、恐ろしいな!!竜巻のような風人形に触れると、ズタズタに引き裂かれる!!)


 たった2人引き裂かれただけで、残り200数10人は

 大慌てで、降伏していました。


 指揮官が全滅したからでしょう、雑兵は従順なものです。

 2000の兵を相手に、こちらは殆んど、戦いらしい事はしていませんが、見渡す限り降伏した捕虜で埋まって居ます。


「全隊員!捕虜の武装を解除し、監視しておくよう!!」

「不穏な動きをする者は、容赦無く殺せ!!!」

(こう言って置けば、びびって縮こまって居るでしょう!)


「第四小隊狼闘士隊、第五小隊戦闘メイド隊!ついて来い!!」

「ブレイ家当主を、打ち取る!!」

「私も行くわ!!」

 母さん、出来ればおとなしくしていて欲しい、とは思っても、

「良いよ!行こう!!」と言ってしまう、ダメな、わしです。


「母さん、ここも、サイレイ家の領地になるんだから、領民の手前無茶しないで!」

「約束は......出来ないかな?ライ君が危なくなったら、相手を潰す!!」

 母さんの潰すは比喩で無く、物理的に潰しちゃうんだから!!


「皆、敵兵は含み弾で殺すよう!」

「剣の使用は、極力控えて!本気出されると、辺りが血の海になる!!」

「室内の敵兵は血で部屋を汚さないよう、綺麗に殺すよう!!」



「進撃始め!!!」

「「フッ!」」

 門番2人はリンとミンが舜殺!綺麗に眉間を撃ち抜いて居ます。


 ブレイ家の城では、50人の近衛兵が、立ち塞がります。

 隊員は、両頬に二個ずつ計4個の鉄弾を仕込んで居ます。

 4発ずつ、全員で計44発連射出来ます。


「フッ!」「フッ!」「フッ!」軽快な音と共に、敵近衛兵がバタバタ倒れて行きます。

 一吹き一殺、無駄弾無し、残った6人の近衛兵は、なぜ仲間が死んで行くのか?

 全く理解出来ない内に、闘士隊の第二射目の攻撃で、死体になって居ました。


 連発式歩兵銃じゃ無いな、まるで自動小銃だね!!!

 綺麗に殺すの指示通り、全員眉間を撃ち抜いて居ます。

 出血が殆んど無い死体です。

 よく見ると小さな違いですが、頭を弾が貫通しているのが、戦闘メイド隊が吹いた弾、威力が弱く、頭蓋骨を突き抜ける事が出来ず、頭蓋骨内に弾が留まり、脳をズタズタにしたのが、狼闘士隊の吹いた弾のようです。

 どちらにしても、即死ですが............


 ブレイ家当主の間、扉を蹴破ります。

 念動が、使え出して便利です!!


 10人の精鋭に守られ、当主ら5人が居ました。

 10人の精鋭は、己の強さに自信があるようで、余裕で剣を構えて待って居ました。


「殺れ!!!」

 隊員の一人一殺、精鋭かも知れませんが、10人程度舜殺です。


 ズッダーーンッ!!!!!!!

 轟音と共に、隣の部屋から、襲い掛かろうとした敵兵30程が吹き散って居ました。

 母さんの含み弾の威力は、迫撃砲並です!!!

(あーぁ!部屋すっごく破壊して血の泥沼!!............助かったけど、やれやれだね)


 青くなった、ブレイ当主達、

「まっ待ってくれ!!話せば解る!!!」


「............殺れ!!!」「「「「「フッ!」」」」」

 話の通じないブレイが、話せば解る?

 笑い死にさせる気?


 終りました!!

 これで平和な世の邪魔者、少しは減ったか?


 中央に位置する、コウセイ家までの、辺境一帯全てがサイレイ国になりました!



 青空は、どこまでも青く澄渡り、悲惨な流血など、無かったかの如く、

 陽射しは柔らかく、お京さんが微笑んで居るようです。





 第一章ライ幼少編終了です。


 獣人、エルフ、ドワーフ、更に新顔の土人達が、ライの基に集まり

 大部隊になり、天下統一に突き進む、

 第二章ライ少年編に続きます。

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