第2話 ヒミコが産まれた!
サイレイ、ライと命名された、元気な赤ちゃんは、全然泣かない手の係らない他は、普通の赤ちゃんに見えますが、生前の記憶がこの赤ちゃんにはあるのです。
家族はもとより、お母さんのベスですら、全く気付いていませんが。
わしは......95才、産まれた年は関東大震災............
神戸高商(旧制高校)卒業後、神戸海洋気象台勤務、勤務中に召集される............
徴兵検査は、甲種合格元士族、士官候補生として、陸軍に入隊......
軍曹昇進後、陸軍航空隊に配属、二枚翼の訓練飛行機(赤トンボ)で飛行訓練......
馬力の無い、しかも複葉機の赤とんぼでの宙返りは難しかった............
スロットル全開で、うんしょうんしょ上昇し、タイミングよくカクンと宙返り!
スロットルをエンスト寸前まで絞り、燃料を、極力消費しないで飛ぶ技術............
訓練終了後、キー67(双発の爆撃機)飛龍の副操縦士として、搭乗............
少尉に昇進、正操縦士になる............
キー67を特攻機に改造され、中尉に昇進、二階級特進で靖国では、少佐になる予定だった............
空母か戦艦狙いの待機中、終戦............
戦後は、特攻崩れに職は無く、する事もない。
しょうがない、先生でもやるか、で即日採用............
教員生活を永くやった............
ちゃんと覚えてる!!
生前の名前は............
名前は............じいちゃん......いや、じいちゃんは名前じゃ無い............
わしは............誰だ?
「ライ!バブバブ独り言?良い子ね、オッパイ飲んで寝んねしましょ」
孫か曾孫位の、妙齢のご婦人、この世界での、わしの母が話ながら、わしを抱き上げ、口にオッパイを押し付けて来ます!!
嬉し恥ずかし、昭和の日本語!
ボインはーー赤ちゃんがーー吸うためにあるんやでーーー
お父ちゃんのーーもんとーー違うのんやでーーー
おぼろ気なメロディーが、頭の中にワンワン響きます。
(良い年して、相手は母親だぞ!)
「あれ?ライ君顔が赤い!お熱は......無いわね!!」
「もう、お腹いっぱい?」
「じゃあ、ケフしましょ、よしよし!」「げふっ」
「良い子ね、寝んねしましょ」
「だぁ!」
「え?前をポンポン?おしっこ?」
「ばぁ!」
本当にライ君はお利口さんね!
オシメしてる意味が無いわ!!
屈辱の大股開き、オシメ交換だけは、阻止すべく必死です!!
やっと一年経ちました。
少し早いかとも思われましたが、会話を普通にこなし、頭と身体のバランスが悪い1才児、よく転びますが、しっかり歩行もこなしました!
母さんが、盛んに父さんに、わしの自慢をしています。
父さんは、その位当然だ!私の子供だからと、嬉しそう!
親バカで、夫婦仲も良いようです。
名乗りかたは、日本と同じ、我が家はサイレイ。
家名が前で父は、サイレイ-シン、母はサイレイ-ベス、わしは、サイレイ-ライとなります。
弱小とは言え、父は家臣も居る城主!
父の書斎には、沢山の蔵書があります。
今は蔵書を読み漁り、知識を深めます。
ザッツ大陸では、小国が生まれては滅ぶ、戦乱混沌とした状態が続いているようです。
魔物は、調べた限りでは、この世界には居ないようです。
当然魔王なんて脅威も存在しません。
だから、勝手気ままに誰彼構わず、隙あらば戦争吹っ掛けては、領地を大きくしたり、滅んだり............
人類共通の敵として、魔王の存在は偉大です!
この世界には居ませんが............
その代わりと言っては何ですが、エルフっぽい種族やドワーフっぽい種族、それに狼男とかの獣人っぽい種族が居るようです。
が、調べた限りでは、人種差別が酷いようで、純粋な人以外は土人と呼ばれ、酷い差別を受けて居るようです。
土人?エルフが森土人でドワーフが地下土人?獣人が......有尾土人!何?酷い呼び名!!
わしが、2才になった時、妹が産まれました。
わしが3才、妹が1才になったある日、妹が突然わしの事を「じいちゃん」と呼びました!!
「?............ヒミコか!!」
「そうだよ!じいちゃん!!ここでは、ライ兄かな?」
「何で?人なんだ?猫じゃ無いのか?」
「じいちゃんが女神様に「詫びる気が有るなら、ヒミコを人にして、わしと同じ所に転生させろ!!」って脅してた............覚えて無い?」
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