戦乱の異世界に転生したようです

犬時保志

第一章ライ幼少編

第1話 惑星オーキョウに転生

 ....................................テシ

 テシテシ、スリスリ

 ぐっすり眠って居たため、なかなか何が起こって居るのか分かりません。


「ん?ヒミコか?」

「なぁーーご」スリスリ


 わしが、75才位の時、ガリガリに痩せた仔猫がやって来て住み着いた、それ以来だから、ヒミコは推定20才超えの猫、チャトラの珍しい雌です。


 何か訴えるような目をして、わしを見つめています。

「ん?......そうか、御別れを言いに来たのか!」

「ん、なぁーーご」

 元野良猫は、死期を悟ると死に場所を求め、何処かに消えると言う............。

「何処にも行くな!わしの膝に来い」

「最後位看取ってやる」


 ヒミコは、ゆっくりわしの膝に上り、丸まってゴロゴロと微かに喉を鳴らしています。


「何か最後に欲しい物はないか」

「ビャーーー」

 卓上冷蔵庫から、ビールを取り出し水皿に注いで、ヒミコの鼻先へ持っていってやりました。


 永く晩酌を共にやって居ったため、ヒミコは結構いける口になって居ます。

 ピチャピチャ、ゆっくり、うまそうに飲んでる。

「わしも一緒に飲むか」残りのビールを、一気に飲み干しました。


 ふーーーはっふーーー

 ヒミコはもう、満足に呼吸できないようです。

「ヒミコ!お前のお陰で、少しも寂しい思いをしなくて済んだ!」

「今まで、有り難う!!!」最後のようです..................。



 突然心臓が、握り潰されるような痛みに襲われ、身体が上に引き上げられました。

「え?」

 下を見ると、胡座をかいた、わしの身体が、ゆっくり倒れて行く所、ヒミコは跳び降り、わしの顔をテシテシやってる、元気そうに?


 そんな風景が一瞬見え、一気に引き上げられました。

 あまりの勢いに目眩を起こします。


 目眩が治まり気付くと、若い女性が土下座しています。



「何々、ヒミコとわしの霊を、間違って迎えたと?」

「申し訳ありません!」


 土下座の女性は新神だそうで、前の地球神はモウロクした呆け神、異常な間違いを繰り返す困った神だったそうです。

(「異世界だよ頑張れじいちゃん」プロローグ参照)


 初仕事がヒミコだったそうですが、わしの霊を引っ張り出してしまったようで、今パニくって居る様子。


「女神さん、そう気にしなさんな!わしの代わりにヒミコが元気になった!」

「礼を言いたい位だよ‼」

「いえ......それが......ヒミコさんも、間もなくやって来ます......」

「何だと!それじゃわしゃ死に損か!」

「申し訳御座いません!」




「じいちゃん元気!ヒミコも来たよ!!」

「じいちゃんと普通に話が出来るね!」

 ヒミコは猫の姿のまま、普通に話掛けて来ます。

 よく見ると、尻尾が二本?

 生前、わしの話を完全に理解しておって、ニャーと言ってる言葉が、何を言っているか大体わしは理解出来て居った!

 猫股だったのか!!



 事の収束の為、近隣の神が集まって来たようです。


 わしはヒミコとジャレあっていました。

 もふもふ、なぜなぜ、うりうり!

 死んでしまった物は、しょうが無い!


 話が纏まったのか、キリリとした女神が代表で、説明を始めました。



 そこから、記憶が曖昧になり、突然の肌寒さに、

「寒いぞーー」と、叫んだ言葉は、「ふぎゃーー」と響き渡りました。


 戦乱の惑星オーキョウ、最大のザッツ大陸の辺境、弱小のサイレイ家に、待望の男児が誕生した所です。

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