第5話 数学
突然だが、、、僕が一番得意な教科は、数学だ。でも、手捨てでTOP10にぎりぎり入る?あ、今回12位。みたいなもので、大したものではない。数学の授業においての最大の問題は、僕の微妙な成績ではない。僕たちの数学教師、松山秋子は、僕のことを、気に入ってくれているようだ。しかし、僕は彼女が苦手だ。松山先生の爽やか、かつ、華やかな笑顔は、教室をパッと明るくしてくれる。教え方もとても上手で。すんなり頭に入ってくる。僕自身、なぜ松山先生のことが苦手なのか、あまり分からない。とにかく、しょっちゅう授業中に当てられる。
「はい、じゃあここ、、、佐藤君、お願い。」
「ウタイ君、解いてみて。」
「出席番号14番の、、、あぁ、佐藤君か、この問題よろしく。」
こんなペース。周りの、松山先生を狙っている(?)男子たちには、あまりいい顔はされない。
今日の授業で、僕は石崎に言われた『良かったな』についてずっと考えていた、
「、、くん、佐藤君‼」
我に返ると、松山先生が僕の名前を読んでいた。
「は、はい!」
慌てて返事をすると、
「佐藤君、今私が言ったこと聞いてた?考え事は、授業時間以外にしてね。」
松山先生は注意する声も、とても優しい。幼い子供を教え諭すような声とほほ笑み。
いけない。授業で目立ってしまった。数学は、授業の中で目立ってしまう危険性が一番高くなる教科だ。松山先生に当てられて、答えを間違ったり、つまったりしてもダメ。クラス中に響き渡る大声でも、聞き返されるほどの小さな声でもダメ。
高校に入ってから一カ月と少しで、もともと苦手ではなかったけれど、数学を勉強した。声のトーンや声質を気に掛けるようになった。そう、全ては目立たないため。そのためなら、声すら変える。
僕の声は、変わった。
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