第3話 初めての、友達?
「このスティックさえ無ければ!」
「これは、ダメだ!大切な物なんだ!」
あいつら、何を取り合ってるんだ?スティック?何のことだ?
「ちょっと、天野君?だよね?何してるの?」
3人の動きが止まった。マズイ、怒らせたかも。
「えーっと、、、佐藤君?ちょっと、助けてくれる?」
この状況で助けを求めるなんて、、、何て奴だ、、、
「ど、どう助けたらいいの?」
「まあいいや、ぼくのスティックは、返してもらうよ!」
なんなんだ?僕が来た途端、強気になった、、、?
天野君が口を開いた。
「助けてくれて、ありがとう。僕、天野怜。れいって書いて、りょうって読むんだ。クラス、一緒だよね 。佐藤詩クン。」
一息で言い切った。
そうだ。天野は、僕みたいに地味でおとなしいけど、天野と話した人が口をそろえて言うことは、
「変人」
普段話さない人には分からない、独特の口調と、相手のペースに持ち込ませない雰囲気。噂通りだ。
「へ、へぇ。りょうっていうんだね。てっきり、れい、かと、、、」
「うん。よく間違えられるんだ。君、確か、誕生日、6月19日だよね。それから、親子丼が好きだって、4月の始めに言ってた。」
「なんでそんなこと覚えてるの?」
「実は、キミと友達になりたいんだ。」
どうしたらいいんだろう。確かに僕には、友達がいない。友達が欲しいという気持ちも、確かにある。だけど、、、
僕は、小さいときから一人だった。一人っ子で、両親は共働きで。保育園も小学校も、中学校も、人数がとても多くて、逆に、一人でいても気づかれなかった。道徳や学活で、「友だちのいいところを書こう」みたいな欄があるときには、とりあえず、隣の席の子のことを無理やり書いていた。
小学校も、中学校も、卒業アルバムの自由スペースは真っ白で、見かねた担任の先生がたくさん書いてくれた。だけど、その黒々とした字で書かれたメッセージは、周りの白さと淋しさをより際立たせていた。中2の時の担任は、僕の状況を見抜いて周りに呼び掛けたりしてくれた。だけど、それは僕にとっては迷惑以外の何物でもなかった。きっと、とても良い先生で、感謝すべきなのだろうけど。
僕と友達になりたがる奴はいなかった。僕が友達になりたかった奴もいなかった。
その僕に、「友だちになろう」と、手が差し伸べられている。動揺しているのが、自分でもわかる。
「まぁいい。とりあえず、ウチに来なよ。どうせ、暇なんでしょ。」
失礼な!どうして僕が暇だって言いきれるんだ!(まぁ、あながち間違っちゃあいないけれど)
どうしよう。行ってみるしかない。断って、険悪な雰囲気になるのは避けたい。
「じゃ、じゃあいくよ。」
「あ、でも5時にはかえってね、親が帰ってくるから。」
「う、うん、わかった、、、。」
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