第5話 奇跡の力
すると彼女は、心の中で優しげな声で話しかけてきた。
「救いたいの? 彼女の事を……」
「当たり前だろ、俺の幼馴染なんだぞ……昨日一緒にゲームもしてた……昨日までは生きていたんだ」
俺がそう言うと彼女は地上まで降りていき、ボロボロになったエレナの家の中に入った。
家の中に入ると血肉が腐っているなんともえぐい匂いが漂っており、一瞬吐きそうになったが、オエオエと喉を鳴らしながら耐えている。
そしてその腐った血肉の匂いを漂わせているのは、紛れもなくエレナの両親の死体の臭いだ……ゲル状に溶けてブルブルになり、人間としての形はそこにはもうなかった……あるのは腐臭を漂わせるただのゲルだ。
そんな彼女の両親を見た俺は、世界滅亡の危機だというのに、目を閉じて1分ほど黙祷をした。
そして家を物色しながらエレナの部屋に向かい、生存しているか確認する為に叫ぶと、床をどすどすと力強く叩く音が彼女の部屋から聞こえた。
「大丈夫かエレナ!」
そう言いながらドアを開けると天井が崩れており、どうやら彼女の部屋も無事では済まなかったようだ。
そしてそんな悲惨な光景を目にしていると、さらに悲惨な光景が俺の瞳に映った。
下半身が千切れた俺の幼馴染であるエレナが、とても苦しそうに呼吸を上げながら、壁にもたれている。
今にも死んでしまうのではないかと思えるくらい、彼女は弱りきっていた。
綺麗な金髪は血で汚れ、顔色は蒼白だ……生きているのが本当に不思議である。
そしてそんな弱りに弱り切った彼女は、俺のことを見ながらか細い声で言った、
「
彼女にそう言われたが、一体俺はなんて言えばいいのかわからず、その場に立って死にゆく彼女を、腐っていく彼女を見ている事しか出来ない。
すると
「
「何言ってんだよ……そんなもん俺にはねーよ」
「少しだけ君の記憶の扉を開くから、待ってて」
彼女がそう言った次の瞬間、俺の頭の中に多大な情報が流れ込んでくる……見たことも無い神秘的な景色に、6人の天使が俺の目の前で、、何か楽しそうに話しているようだ。
会話の内容は何も聞こえなかったが、その流れ込む記憶の海の中を彷徨っていると、突然にその世界の未来が見え、更には押し寄せる崩壊する世界を全てはねのける光景が目に映った、まさに奇跡とも呼べる所業である。
いったい誰がそんなことをしたのかはわからないが、俺の目にはそんな景色が永遠と繰り返された。
「まさかこれって俺がやってるのか?」
「そうだよ、これは君の
それじゃー
そして俺は俺自身が知るはずの無い、記憶の海の中で聞いていた訳の分からない言葉をそっくりそのまま真似た。
「我に力を与えし神の刻印、輝け戦場における
すると俺の神の刻印が急に輝きを放ち、その光がエレナの事を飲み込んでいく。
すると彼女の腐っていたはずの下半身は徐々に再生を始め、俺は自分で行ったことに対して驚き、本当に自分がやったのかを疑っていると彼女が笑いながら言った。
「やるじゃないか
するとエレナの目の前に突然黒いローブをまとった、見知らぬ小さな男の子が現れたのだった。
アポカリティックソング フワッティーゆうと @fuwwateli
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