第2話 ファーストアポカリティックソング

「ってお前誰だよ? 俺はお前のことなんてしらねーぞ?」



すると目の前の少女は薄いピンク色の長い髪を揺らしながら、俺の周りをゆっくりじっくりトコトコと歩き、舐め回すようにクリクリと大きな桜色の瞳で見つめてきた。



「まさか僕の事を忘れちゃってるのかな?

寂しいこと言うね、酷いやつだ本当に……」



「忘れちゃってるも何も……初対面だろ?

しかもこれ俺の夢の中だし、夢の中の登場人物だろただの?」



すると彼女は少し悲しげな表情になり、溜息をつきながら言った。



「はぁーまぁーいいよ……その内思い出してくれれば

そんな事よりも1度目を覚まして外を見てみたらどうだい?」



「嫌だね! 俺は明日の早朝ランニングの為にしっかり今……」



だが次の瞬間俺はその言葉を言い切る前に、強制的に覚醒させられており、俺の横には桜色の綺麗な髪の少女が眠っていた。



「……………………ん?…………ん?」



そう言いながら俺は、目の前にいる桜色の少女の事を見て見ぬ振りをし、布団を被せ冷静になる為にコーヒーを飲みにキッチンへと向かった。



「何も……何もいなかったよな? 幻覚だよな?

走りすぎで疲れてるだけだよな?」



そしてコーヒー片手に俺は再度寝室に向かい、ぐびぐびとコーヒー飲みながら布団をめくると、俺の目の前には間違いなく色白の裸体の少女が静かに寝息を立てている。


俺は驚きのあまり腰を抜かせ、コーヒを床にぶちまけたが、そんな事気にせずに全力で壁際まで後ずさり、両手で頭を抱えながらブツクサ言っている。



「いっ、いっ、いったいいつだ……こんな可愛いい少女の服を剥いだのは……寝てる間に俺が意識のないまま連れてきたのか? ってそんなバカな事はあるわけないだろ、でも一体あの子はどこから湧いてきたんだよ、それに夢の中で会った子だぞ?」



「うるさいなぁ〜、せっかく君の隣で寝ていたのにうるさくしないでくれる?」



そんな事を言いベッドの上でベタ座りしながら、両手を頭の上で組む裸体の少女は、大きなあくびをしながら、気持ちよさそうにぐぅーっと伸びている。


そしてそんな裸体の少女の胸は、髪の毛に被さっており全ては見えなかったが、それでもなかなかそそるものだなとチラチラと見ていた。



「てかお前本当にだれだよ? どうやって家に入った?

それに何で裸なんだよ……しかもスタイルいいし」



「そんなースタイルが良いだなんて、嬉しい事言ってくれるなー!」



そんなどうでもいいような返事を返す少女に、俺は低い声で再び問う。



「目的は何だよ? 答えろ」



すると少女はベッドの上から脚を下ろし、そのまま俺の方にゆっくりと近づいてき、目の前に来るとそのまましゃがんで言った。



「目的……ね、、、それを聞く前に君はやるべき事があるんじゃないのかな?

ほら、僕の格好を見てごらん? こんなに可愛い美少女が全裸でいると言うのに君は何もしないのかい?」



「おっ、お前何言ってんだよ! ばかなのか?ばかなんだろ! 」



そんな俺の反応を見ながら、彼女は盛大にバカ笑いしている。



「ぶふっ! あはは……あは、あははははぁ!

君は可愛いなー、で?何もしないのかい?」



からかい口調で彼女がそういうと、俺はゆっくりと立ち上がり、押入れの中から女性用の服エレナの服ピンク色の下着エレナの下着を取り出し目の前にいる桜色の髪の少女に投げつけた。



「さっさと着ろ、この露出狂め」



「フッ……つれないな〜、まぁーいいやこれから先は死ぬまでずっと一緒だし」



そんな彼女のとても重たい一言に、俺はひやりとしながら再び質問した。



「で、何が目的だ? 言い逃れはさせねーぞ?」



「何が目的って……そんなの外を見てみれば少しはわかるんじゃないのかな?」



桜色の髪の少女は夢の中でそんな事いってたなーと、そんな事を呑気に思い出しながら、俺はカーテンを開けた。



「……………………ん?」



「固まっちゃってどうしたのかな?

空に浮かぶ少女に欲情しちゃったのかい?

欲情するのは僕の体だけにしなよ? 浮気はダメだよ」



そんな事軽口で言っている彼女に、一体あれが……空に浮かんでいる金色の光を放つ白髪の天使の様な奴が、一体何者なのかを桜色の髪の少女に問う。



「あれが何者なのか……ね…………一言で言ってしまえば上空に浮かんでいるあの天使は、第一の破滅の歌ファーストアポカリティックソングだ。

そしてその歌があと10分ほどで鳴り響くけど、もし鳴り響いたらこの世界はどうなっちゃうのかな?」



不敵な笑みを浮かべながら桜色の髪の少女は言った。



「どうなるも何も……そんなのわかるわけねーだろ!

世界が歌ごときに滅ぼされるってのかよ?

そんな事天地がひっくり返っても起こらねーよ」



「僕の言うことが信じられないのかい?

もし信じれないのなら待つといいさ……10分後それは必ず起こるから、まぁーもし第1の破滅の歌ファーストアポカリティックソングで死にそうになっても僕の力で守ってあげる、君だけは絶対に死なせないから」



真剣な顔をしながら言う桜色の髪の少女の事を俺は、信じてやりたい気持ちもあったのだが、世界が滅びるなど全く想像も付かないし、ありえないと思ってしまっているせいで、彼女の事を信用出来ずにいた。



「もし本当にその歌とやらが響いたら……俺はお前の事を全力で信用してやるよ」



俺がそう言うと彼女は、何がおかしいのかわからないが突然大笑いした。



「ふっ……あはは、あはははははっ!

君はやっぱりどこに居ても君なんだね……なんか安心したよ」



「なっ何がおかしんだよ!」



「いやぁー何でもないよ? 本当に…………ね」



そして彼女の言った通り、10分後に第1の破滅の歌ファーストアポカリティックソングは神秘的な歌声と共に全世界に鳴り響いたのだった。


そしてその歌は触れた物全て溶かしてしまう、血の雨を雲のある場所から降らせた。


ビルが崩れる音に、人々の叫び声、汚染され死んでいく大地に海、そして世界滅亡へのカウントダウンは始まった。


世界は死んでいく、鳴り響く破滅の歌アポカリティックソングと共に。

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