第4話

「おい!!腰が引けてるぞ!!」


鬱蒼と茂った森の中、アインの怒号が響く。

その声に驚いたのか、飛び立つ鳥達。


ちゅぴ〜ちゅぴちゅぴ!


ーちび〜ちびちびって言った!?私の気持ちを代弁してくれるなんてんんていい子達なんだ…なんてことを考えてる場合じゃなくて!


「ちょっ!」


突進してきたゴブリンを何とか躱すと、


「えいっ!」


着地した足を軸足にして上体をひねり、振り向きざまに切りつける。


「ギャオッ!」


何とか当たったミノタウロスのツノ製の剣がその体を切り裂いた。

砕け散るゴブリン。


「そんなこと言ったって、こんないっぱいじゃ、意識してる暇なんてないですよ〜!」


私は今、ゴブリンの群れに囲まれている。

なぜこんなことになっているかと言うと、少し前。

私たちは、私のレベリングのために森にやってきていたのだが、そこで出会ったのがこいつら。

初めは一気に経験値が稼げると思っていたんだけど…

「じゃあ俺らはあっちで待ってるから。」

「そうだね。僕たちがいたらフィオナちゃんの経験値が減っちゃうし」

遠ざかる2人。

「ちょっ、ちょっと!?アイン!?リィルさん!?…んなっ!?」

慌てて追いかけようとした私の道を緑の壁が塞ぐ。

どうやら、私が最弱ということが分かるらしい。

「危なかったら助けるから〜」

壁越しにリィルさんの能天気な声が届く。


ー全く、今思い出しても忌々しい…


「ふんっ!!」


飛びついてきたゴブリンに恨みを込めて切りつける。


「グウォッ!」


砕け散るゴブリン。


「さあ、次は誰が粉々になりたいのかなぁ〜?」


私はゴブリン達に微笑みかける。…歪んでなきゃいいけど。


ーアインへの恨みを、晴らしてやる!


と、私の剣幕に押されたのか、後ずさるゴブリン達。

そしてーー


「さあさあどっからでもかかってきなさーーああっ!?ちょっ、ちょっと!?」


一斉に跳躍。

もちろん、落下点は私。


「え!?ええっ!?それは聞いてないって!」


私は地面を蹴ると、転がって何とか回避、

しかし、立ち上がろうとした瞬間、もうゴブリンが迫っていてー


「上だっ!!」

「ふえっ!?」


突如聞こえたアインの声に、半ば無意識で剣をあげる。


キィンッ


ぶつかる剣と剣。

何とかゴブリンの剣を防げたようで、すぐ近くにあったその顔が悔しそうにゆがむ。


「跳ね上げろ!」

「はいぃ!1」


アインの指示どうり剣に力を入れる。

よろめくゴブリン。


「横だ!」


横に裂かれたゴブリンが消滅。


「…なんとか…やった…」

「まだくるぞっ!」

「んにゃっ!?」

「横!かわして!つけ!引いて!上!はらえ!詰めろ!」

「ひいいぃ!」


次々と飛んでくるの指示に、何とかついて行く。


「違う!ひくな!詰めろ!払って…そこだ!」


ーあれ、何だろう…だんだん上手くなってるような…?


学校で習った技がスムーズに連結できてる感じがする。


「最後〜!」

「そりゃ〜〜!」


最後のゴブリンが消えた。

私は剣を収めると、膝に手を地て呼吸を整える。


「はぁ〜…」


自然と、安堵のため息がこぼれる。


ー…なんか私強いかも?


ちょっぴり嬉しくなって小さくガッツポーズをしてーー


「後ろ!!」


鋭いアインの声。


「へ!?」


無防備に振り返った私の目の前に、緑の顔。


ーうそ!?どこからっ!?木の陰!?


あわてて剣を抜こうとするが、


ー間に合わないっ!!


ゴブリンがニヤッと笑って、


ーあ、まずっ…


「フィオナ!」


アインの叫び声だけが、やけに鮮明に耳に残った。

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