第4話訓練

日常ではあんなに可愛い少女だった彼女は一度バリアフリーに乗り込むとその顔つきは、言動は、そして行動(立ち回り)は我が国を支える絶対エースへと変わる。


今日の訓練は五対五の実戦形式のチーム戦だった。もちろんミエルはリーダーを務める。

リーダーとしての素質はパイロットのランキングにて数年間に及びトップに居座る【一身 双哉(いっしん そうや)】をもしのぐと言われる。


本人にその秘訣を聞くと『視野』の広さだと答える。敵だけではなく味方の『足』の速い者、『腕力』の強い者、『耳』がソナーになる者。

それらを上手く扱えるのが『視力』が良い彼女らしい。


そして、もう一つ。彼女はバリアフリーに乗るのを...『目が視える』ようになるのが楽しみにしているから、強くなると。

そう答えた。


『フラッシュバック』、バリアフリーに備えられた機能である。

それは体で不自由な部分を超強化するモノ

例えば、足が動かない者は移動が速くなる、耳が聞こえない者は聴力が上がる

...目の見えない者は視力が良くなる....など


そんなものがあるせいで、他人は障害を「奇跡」「神からの贈り物」と喜ぶようになった。


それが、騙されているようで腹立たしいかった。

だってそうだろ、それって本人の意思を乗せる方向へ向かわせるエサだ。

あの世とこの世の境目まで連れてくるための撒き餌だ。


しかし、そのおかげでミエルは世界を覗くことができたのだ。

他のパイロットたちもやっと人としての気持ちを味わったのかもしれない。

だけれど、俺からしたら...


「はは....三途の川を渡る船を作ってる気分だ...」



そんな俺の気持ちとは裏腹に、訓練は始まろうとしていた。


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