第3話 抵抗



……名前は、L、年は忘れた、

 「君のは、どんな歴史?」

気分のいいもんじゃない、他人から蔑まれつづけた、味方なんていやしなかった。


家族はいた。両親と、一人の兄貴。貧乏じゃなかった。幸せでもなかった。

人とは違う風になりたかった、だからいつも皆の反対をやってやった。俺は誰にも理解なんてされたくなかった。唯一無二なんだ、からだも精神も、等しい価値なんてクソくらえだ、

同質に生きる意味なんてないと思ってずっと過ごした。今だってそうさ。

敵?味方?、違う、もともとあいつらは人でもなんでもない、ただ二足で歩く無機質なさ。プログラムされたルールが絶対だと勘違いしてやがる。せいせいしてるよ、そんな地獄から抜け出せたんだ。もっともここだって反吐が出るほど気分が悪いけどな、でもそれにしたってまだマシだね。


これでもう十分だろう? さぁ、早く楽にしてくれ。

 「……できない」

なにを言ってる、なにをいまさら。約束は守った、質問には答えたぞ。

その上まだなにか不満でもあるっていうのか、ド畜生。

 「……こころが、 固い、 暗くて、 弱い」

はっ、笑わせるね、いったいどうしろっていうんだ。「固い」だって? さすが神様、さぞ素晴らしい感性をお持ちなこって、俺をからかってるのか。 ふざけるのも大概にしろよ


「………………」


物体としての感覚はいっさいない、けれども精神の、こころの動きは、気持ちはここでもしっかりと感じる。いまの静けさは、なぜだか、落ち着かない。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る