虚ノ章
千景は
罠スキル『
暗闇の中で、そんな感覚を味わわされると、自分が今、上を向いているのか下を向いているのかさえわからなくなったことを覚えている。この男は自分とは違い、罠がそこにあると認識して突っ込んだわけではなく、いきなりその感覚を、味わうことになり、今、男の心は、恐怖で押しつぶされそうになっているはずだった。
千景は静かに男の側まで近寄り、忍術『
「俺の質問に真実で答えろ」
「わかった」
「お前の名前は? エンデラから何人お前のようなやつが来ている? 構成とお前がその中でどのあたりの位置にいるか教えろ」
「名前はビマだ、エンデラから国王の護衛として城に十人で来ている、隊長がいて、俺は副隊長で二番目の強さを持つ、残りは八人、俺より弱い」
千景はそれを聞いて、この世界でやっていける自信を、徐々に得ることが出来た。ゲーム内では忍術『傀儡操針の術』に会話を操作する効果はなかったが、針を刺されたキャラクターをコントロール出来るというところから、現実の肉体にその能力を
そもそも忍術『傀儡操針の術』はゲーム内で使うことなどほとんどなかった。高レベルのNPCやキャラクターには、耐性があって、効果が発動しなかったし、こんな近くに近寄って首筋にピンポイントで当てなければいけない忍術は使い勝手が悪かったからだ。ただそんな使い勝手の悪い忍術ですら、こちらの世界ではレベル差のおかげで有効に働くことを実感できた。
「質問を続ける、お前とゴルビスの間には、どんなやりとりがあった? ゴルビスへの報告はどのようにする?」
「ゴルビスからは、ここにエルタが逃げ込んでいるので、それを始末してほしいと頼まれた。それだけだ、報告にはゴルビスの部屋に直接行くことになっている、窓の外からこの『
もうすぐ罠スキル『虚宮虚実』の
「わかったありがとう、そのナイフを渡せ」
ビマは言われた通り千景にナイフを後ろ手に渡した。
「さようなら」千景がそう言うと、ビマの足元に黒い穴が開き吸い込まれていった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます