耳ノ章
少しずつ出口との距離を
忍術『
外には盾を前面に構えた一般兵士たちが隊列を組み、三十人程度の人数が、建物を包囲している。その後ろ側に数人、職業一般魔導士という、建物の中では遭遇しなかった職業を持つ兵士がいた。
レベルこそ低いが、知力と呪術力が高め、これがこちらの魔法職ってことか、注意深く周りを、設置されている罠系統や、結界系統がないか詳細に調べてみたが、特にそれらしいものはなかった。そこにいる兵士達の全員が、こちらの建物の入り口の方を注意深く見ているだけで、千里眼に反応している気配は感じられない。
そして、その包囲している一団の中にレベル10と周りと比べると頭一つ抜けている二人がいる。一人は、職種騎士団長、種族人間、黒色の鎧を身に
不安そうな顔をしているエルタに千景は「ごめん、もう一回、抱える」と声を掛ける。エルタは、小さく
「いかがいたしますかゴルビス様?」
「兵士がそれでは中にいたエルタも生きてはいないだろ、邪神がいるとかなんとか迷信があったものの、王族しかこの遺跡の入り口の石扉を開けることは不可能だったから、中を確認したことはなかったが……こんな朽ち果てた遺跡にそんなものがいると知っていたか?」
「いえ、そんな話は全く存じませんでした、一応、伝統的な
「そうだろうな……まあいい、そんなことより、お前達! その兵士達を殺した者の姿を本当に見ていないのだな?」
「は、はい、申し訳ございません、あまりの惨状のために、即座に
それを聞いた千景は、別にエルタの話を疑っていたわけではないのだが、一応これでエルタの話の裏付けが取れたので、この世界で一人は、普通に話てもいい人物が出来たかなとエルタのほうをちらりと見た。
「兵士が戻ってきても、その後ろを追ってくる気配はないようだな、兵士達を殺したやつは中から出てこれないのか、それともこちらの様子を中から伺っているのか」ゴルビスが言った。
「この建物自体が封印結界のようなもので、邪悪な者はあそこから、出てこれないのではないかと」
「前向きな意見だな、前向き過ぎる、邪神は邪神で問題なのだがそれよりエルタの死体だけは確認しておきたいのにどうすればよいか……」
「私自らがいきますか?」
「やめておけ、お前がいなくなったら誰が私を守るんだ、しょうがない、エンデラ国にこれ以上借りは作りたくはないが、今一度その手を借りるとする、中にいるエルタの生死の確認と、生きていた時の処理のために……婚姻の儀を行うため向こうの国王も来ていることだし、断れんだろ」
「そうなりますと、婚姻の儀は中止に?」
「亜人種の要人達も、今回の婚姻の儀を盛大にやるために呼んでいるのだぞ、そんなことは出来ん、これ以上このアヴァルシス王国の騒動が長引いてると知れたら、どうなるかわからんわ」
「では……後残っている血族となるとミレア様しかおりませんが、少々幼い気がします、12を超えたばかりだったかと、教会に確認しませんと」
「教会か
「ではそのように、ここはエンデラの者が来るまで放置ということですか?」
「見張りの兵士を付けておけ、こんないつ崩れ落ちるかわからないような建物に、本当に邪神が居るなど迷信とばかり思っていたが……エンデラの者がだめだったらだめでその時また考える、これ以上は時間がおしい」
「お前とお前、ここに残って監視を続けろ、残りの者は城に戻れ、城に戻った者の中から、夕刻になったらここの監視を交代させるものを選んで交代させろ、残りはゴルビス様の背後を守りつつ城へ戻る」
二人の兵士が残され、ゴルビス達は建物前から去っていった。
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