16p

 空を見上げたまま、独り言の様に、ひろしはそう言う。

「どういう意味ですか?」

 さなぎは顔をしかめた。

 理由があるから、さなぎは死のうとしている。

 理由は、さなぎが死ぬには、必要なものだ。

 理由が無いなら、死ぬことなんて考えないと、さなぎは思う。

 生きるにも、死ぬにも、理由は必要だと、さなぎは思う。

「僕には、死ぬ事に特別な理由なんて無いんだよ。僕が何かをするのに、理由なんか無いんだ。死ぬ事を考えたのも、そんな気になったからで、特別な事なんて、何もないんだよ」

「そんな……」

「良くさ、言うだろ? 生きるのに理由なんていらないってね。僕も、そう思うよ。だから……」

「だから、死ぬにも理由は要らないって言うんですか?」

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