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 そんな夜に、さなぎは山の中、突っ込み所満載の様子で居るのだ。

(まさか、こんな時間に、こんな山の中に他人が来るとは思わなかったわ。本当にどうしよう。最悪の気分だわ)

 気まずさと恥ずかしさでほてる顔を、さなぎは俯いて、男に見られない様に隠す。

 男は、そんな、さなぎから視線をロープに移した。

「えーっと、違っていたらすみません。でも、十中八九、そうだと思うんで、訊いちゃいますが、自殺……ですよね?」

「ちっ、違います!」

 さなぎは早口で答えた。

 慌てた様子のさなぎと違い、男の方は、相変わらず落ち着いた風で、ロープを指さしながら、言う。

「いやぁ、でも、あのロープ、首吊りのアレでしょ? ビールで酔っ払って、そのまま首を吊ろうとしていたのでは無いんですか?」

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