第3話

そのときミチヒロがいった。


「あれっ、家に誰もいないのに、テレビをつけてるのか?」


こいつはいったい何を言っているんだと思い、僕は言った。


「誰もいないって、神崎さんがいるじゃないか」


ミチヒロはもう一度居間を見た。


「どこに?」


「どこにって、ソファーに座っているじゃないか。でかい図体の禿げたおっさんが」


「なに言ってんだ。そんなやついないぞ」


「そっちこそなに言ってんだ。いるだろう、そこに」


その時ノボルが言った。


「いや、誰もいないぞ」


ケンも言った。


「うん、でかいおっさんどころか、誰もいない」


三人とも居間と僕の顔を交互に見た。


そして僕の顔でその視線が止まった。


最初は冗談かと思った。


しかし神崎さんが家にいることは、友達の誰にも話したことがなかった。


したがって神崎さんが見えないふりをすると言う打ち合わせを、事前に行なえるわけがない。


それに三人が三人とも、とても嘘を言っているようには見えなかったのだ。


僕は考えた。

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