第2話

その背中が「それ以上神崎さんについて聞くな」と言っていた。



その後小学校に入学し、友達を家に呼ぶようになると、家では恒例の儀式が行なわれるようになった。


それは友達が来る前に、テレビの前に陣取っている神崎さんを、母が一番奥の部屋へと連れて行くのだ。


先祖代々から続くこの古くて無駄に大きなこの家の中で、普段は物置と化している四畳半の和室だ。


玄関と勝手口以外では唯一鍵のかかる部屋でもあった。


その鍵は普段母が所有しており、神崎さんを部屋に押し込むと、すぐさま鍵をかけるのが常だった。


それについて母に


「なんで神崎さんをあの部屋に閉じ込めるの?」


と聞いたことがあるが、母は


「それは神崎さんだからよ」


と言って、何も用事はないはずなのに、台所へと足を向けた。



ある日のこと、学校で友達と話をしていると、急にみんなで僕の家に遊びに行こう、という話になった。


僕しか持っていなかった新作ゲームソフトが、その話の流れの中心にあったからだ。


僕以外ではミチヒロとケンとノボルの三人だ。


その日その時間、父は仕事で、母と祖母は所要で実家に行き、姉はクラブ活動中であった。


母から何度も


「私やお父さんがいないときに、お友達を家に連れてきてはいけません」


と言われ約束させられていたが、ちょっとした反抗期だった僕は、そんなことは知ったことではないと、その約束を自らすすんで破ったのだ。


四人で家に入り、僕の部屋へとむかう。


途中、居間の前を通る。居間ではいつものように神崎さんがテレビを見ていた。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る