第15弾 レジェンドツール
白い世界。何も見えない。ここはどこだ?
『昇!』
なんだ、七花か。
『昇!』
なんだ、ムファンさんか。
『『学校に行こう!』』そうか。もうそんな時間か。またいつもの三人で登校だ。
校門で用務員のミクイーさんが挨拶している。
『おはよう! 昇くん、七花ちゃん、ムファンちゃん!』
げっ。今日は校長のムプイハさんの朝礼がある。めんどくさいなー。
...? 何か、忘れているような...?
『ほら、昇! 次、ムプニハさんの授業だよ! 遅れたら怒られるよ!』
そうだった。ムプニハさんは顔は良いのになー。
...やっぱり何か忘れているような...?
『ドラゴンだ! ドラゴンが来たぞー!』ドラゴン? ああ、ドラゴンか。やっぱりデグチャレフだよな。
「 ... のぼる ... ...昇...」
なんだ? 頭に直接声が?
「おきて... ...おきて...」
ああ、これは、『夢』か。
気付いた瞬間、俺の意識は急に浮上して――
「!! ハァ、ハァ、ハァ...」俺はベッドから跳ね起きた。
...恐ろしい夢を見た。何が恐ろしいかって? ムファンさんが女子制服を着てるんだぜ? ドラゴンよりビビった(再)。
「昇! 起きた?」起きた。もう冷や汗でヤバい。見ると七花はもうすでに身仕度を整えている。
「今日は何するの?」そうだなあ、やっぱり、元の世界に帰る方法を探すか。
「元の世界に帰る方法を探しに行こうと思う」
「何かアテはあるの?」アテか... そうだな...
「ムプイハさんを訪ねようと思う。この世界の情報を集めないと」
ということで、俺達はムプイハさんの家に来ていた。
「元の世界に帰る方法、ですか...」ムプイハさんは渋い表情をする。
「やっぱり、難しいんでしょうか?」
「それには、この世界の事を少し説明しなくてはいけませんね」そう言うと、ムプイハさんは説明を始めた。
「この地は、『アクシナ』という名の大陸です。西半分が人間の国『シーグ』で、東半分が魔族の国『ザウア』です」魔族。やっぱりいるのか。
「魔族と人間は長きにわたり戦争を続けています。この町は大陸の外れですからあまり戦争とは関係がありませんが、時々あの竜のような魔物がやって来るのです」魔族に魔物ねえ。ファンタジー世界では定番だが、この世界でも悪者らしいな。
「更に、天空の国『ゾーン』があります。実際に行った者によると、天使たちが住まう国だとか。戦争には基本的に無干渉ですが、天使達は全員がとてつもない戦闘力を誇るという噂です」なるほど、圧倒的な戦力を誇る天使か。目を付けられると厄介だな。
「『シーグ』は人間族の神『シクシル』、『ザウア』は魔族の王『グスル』、『ゾーン』は天使達が敬う神『スプシナ』がそれぞれ納めております」
『シクシル』『グスル』『スプシナ』ね。
「それで、この方たちは、とてつもない魔力を有していると言われています。通常の魔法では、世界線を越える事など出来ません。しかし、この方たちなら、あるいは...」
「それは、簡単な事ではありませんよね?」
「はい。普通に考えて、まず不可能でしょう」どうするかな?
「...では、そいつらを『力』で従わせる事は?」ムプイハさんはニヤリと笑いながら答えた。
「そういうと思いました。交渉よりもそちらの方が難しいでしょうが、試してみる価値はあるかもしれないですな」その言葉を聞いて俺は決意した。
「出発します。まずは、『シーグ』を目指しますよ」
「それならば、これをどうぞ」ムプイハさんは古い鞄を渡してくれた。
「これは、何ですか?」
「この鞄は、この町にある唯一のレジェンドツールです。レジェンドツールというのは、その名の通り伝説級の装備の事です。これの名は『無牢』といいまして、どんなものでもどれだけでも入れられる鞄なのです」オイ。四○元ポケットじゃねえか。
「いいんですか!? こんな高価なものを!?」
「無論。お二人にしか、託せないと思いました。それと、このスキルを差し上げます」そういうとムプイハさんは俺達のステータスプレートに触れた。
俺達のステータスプレートにスキルが追加される。その名は『鑑定』。
「このスキルは、見ただけで相手のステータスを知ることが出来ます。このスキルが強化されれば、昇さんの???も解明できるかもしれません」
「ありがとうございます。なんと言っていいか...」
「気にしないで下さい。私も、このスキルでお二人が信用出来る相手だとわかりましたから」
「...わかりました。色々とありがとうございます。では、出発します」
「ご武運を願っております」
こうして、俺達は『マーズル』の村を出発することになった。
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