第14弾 回想

平凡な家庭に、俺は生まれた。父は警察官。しかも極度のガンマニア。母も元警察官だった。何故警察官を目指したのかを聞いたこともある。

「え、銃が好きだったから」

「あなたが警察官になるって言ったから」母の父を見る目は熱っぽかった。

「そうだったのかぁ。こいつ~」初めて両親に殺意を抱いた。思えば、俺がリア充を憎むようになったのはこれがきっかけかもしれない。

父譲りで気付けば俺もガンマニアになっていった。銃の事を語る父の顔は、いつも輝いているように見えた。俺はその顔を純粋に『カッコいい』と思った。

普通、休日に子供を連れていく所といったらデパートや遊園地だろう。しかし父は普通ではなかった。俺を射撃場に連れて行ったのだ。母も止めなかった。小さい頃の俺の休日の過ごし方は、もっぱらサバゲーだ。

「え!? 息子さんっすか!?」そりゃ驚かれた。

俺が生まれて間もない頃、隣の家に家族が引っ越してきた。しばらくしてわかったのだが、俺と同じ年頃の娘さんがいるようだ。それが七花。父と母は、

「同じ年頃で家も隣同士か! 俺達と一緒だな!」

「あらあら。運命かしらね?」何を言っているのかはわからなかったが、ウザかった。

近所中でも有名なくらい仲が良い俺の両親だが、(ニヤニヤしながら『弟か妹が欲しくないか?』と聞かれた時は本気で焦った)隣の夫婦も負けず劣らず仲が良かった。そして明るい性格だったため、すぐに俺の両親も打ち解け、以後家族ぐるみの付き合いをする事になった。

親同士が仲良いのだから、子供も必然的に合う機会が多くなる。七花と初めて会った時、七花は満面の笑みで

「お婿さんにしてあげるよっ!」と言った。あの時は軽々しく、

「うん!」なんて言ったが、もう少し考えるべきだったかもしれない。そしてその様子を見ていた四人の大人。全員ニヤニヤしていたな。黒歴史だ。記憶から抹消したい。

七花と仲良くなってよく遊ぶようになり、お互いに家に行ったり来たりしていた。幼稚園で俺が友達を作れずに孤立していた時、先生よりも先に手を差し伸べてくれたのが七花だった。案外、俺はコイツに救われているのかもしれない。

お泊まり会みたいなのもしたな。二人だが。お風呂も一緒に入った。今思うとスゴいな。しかし、その頃には無かった物を現在進行形で押し付けられている。無心になろう。

ある程度仲良くなった俺と七花を見ると、父は、

――サバゲーに連れていった。もちろん、七花の両親の了承なしでだ。「昇、七花ちゃん、今から面白い所に連れて行ってあげるよ!」セリフだけ聞けば明らかに犯罪者だ。

そうしてサバゲーを始めた七花だが、無双した。

ハンドガン、『M1911』だけでだ。

始まる前は

「おいおい嬢ちゃん。これはオママゴトじゃないんだぜ?」とか笑いながら言っていたオッサンを開始五分で退場させた。実際に戦った直後の人はガタガタ震えながら、

「なんだよ... なんなんだよ、あのガキ達はよぉ! オートマチックピストルと思えねぇよぉ! サブマシンガンかなんかか!?」何故か俺も含まれていた。

「井坂さんの息子さんと幼馴染みらしいですよ」

「『鬼神のイサカ』の息子と幼馴染みだと? うわぁぁぁ! 悪夢だぁぁぁ!」あの人大丈夫かな。ちなみにこの時、俺と七花は8歳である。

別の意味で父は震えていた。

「どうしよう... 七花ちゃんのパパとママに怒られる...」そりゃそうだ。めちゃめちゃ怒られました。でも、七花が楽しそうだったので、了承を貰えれば連れて行ってOKということになった。以後、俺と七花はサバゲーでよく遊ぶようになった。

あれは、小学校四年生の時だったか? 俺と七花がいつも一緒にいることを生意気に思ったのか、六年生の男子数人が俺と七花に絡んできた事があった。絡まれるのも仕方ないのかもしれない。休日になれば腰にホルスターを付けて遊んでいたからな。

「よう、七花。 ちょっとこっちこいよ」七花が連れて行かれかけた。もちろん俺は抵抗した。今思うと危なかったな。腰に釣っていた電動ガンを連射しまくったのだ。見事にリーダー格のヤツの手に当たったから良かった。 

「僕のお嫁さんに、手を出すな!」こんなことを叫んだらしい。恥ずかしさで発火しそうだ。

そんな事が会ってから、余計に俺は孤立していった。

中学生の時もずっとぼっちだった。でも、七花はずっと一緒にいてくれた。他の友達よりも俺を優先してくれた。なんてありがたいんだ。聖母か?

...やっぱり、『そういうこと』をするのは良くないな。この関係は壊したくない。俺にとっての宝物だ。

ふと横の七花に視線を向ける。すると、俯いて黙りこんでいた。泣いているのか... そりゃそうだ。知らない所に放り出されて、家にもすぐに帰れない。泣きたくもなるよな。

「大丈夫。大丈夫だよ...」さすがの七花でも耐えられなかったか... 優しく頭を撫でてやった。

七花はゆっくりと顔を上げると、目を言った。

「むにゃむにゃ... 昇、それはうどんだよ... 4で割れないよ... 扇風機、もしくはハンガー持ってきて...」寝言かい。寝てたんかい。しかもめっちゃ気持ちよさそう。

七花は大丈夫だろうな。心配するだけ無駄か。一つ安心したところで、俺の意識は闇に落ちていった。

















  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る