番外編 昇に至るまで

とある山奥。

「オラァ! 脳天ブチ抜いたるわぁ!」元気な少年の声がする。

「アホンダラァ! そんな弾、かすりもせんわ!」元気に返事をする少女の声も聞こえる。

現在八歳の少年と少女は、今日も元気に豆鉄砲でサバイバルゲームをしていた。

少年の名は、井坂堅二いさかけんじ。昇の父親である。山奥の村に生まれ、大きな病気もせずすくすくと育つ。勉学はからっきしだが、身体能力は高い。

そして、極度のガンマニア。手先は器用なので、暇さえあれば木や竹を使ってモデルガンや豆鉄砲を作っていた。そしてその豆鉄砲を使ったサバイバルゲームの相手をしてくれていたのが、幼馴染みの豊和洋子ほうわようこ。堅二の事を気にいっており、釣られてガンマニアになる。堅二の家の隣に住む。

中学校を卒業したが、村には高校がないため、町の高校へ通うこととなる。成績の悪い堅二は志望校にギリギリだった。洋子は成績が良いためもっと上の高校を目指せたが、なぜか堅二と一緒の高校へ行くことに。不思議に思った堅二が聞いてみると、洋子はそっぽを向きながら頬を赤らめて、

「サバゲーの相手、いなかったら困るでしょ」いつの間にか洋子の堅二への気持ちは恋に変わっていた。

高校卒業後、堅二は大学を出て警察官になり、町に移り住む。洋子も村を出て警察官になった。町に住んでも堅二と洋子の交流は続き、一緒にサバゲーをしたり買い物をしたりする。堅二は鈍感なため気付かなかったが、端から見れば完全にデートであった。そして洋子は気付いていた。

ある程度年月が過ぎ、収入も安定してきたところで、洋子は堅二に結婚を申し込もうとした。しかし、いざ話すとなるとなかなか言い出せない。もじもじしていると、

「洋子、俺と結婚してくれ」堅二の方から申し込んできた。洋子は驚いたが、

「ええ、喜んで」こうして、めでたく二人は夫婦となった。

結婚後、洋子は堅二に聞いてみた。

「なんで私だったの?」堅二は即答した。

「お前の飯が、旨かったからだよ。嫁にするには、この人しかいないと思った」

今も、この夫婦は近所中でおしどり夫婦と呼ばれている。

一年後、昇が生まれる。




昇の両親の短編です。次の話を書くにあたり、昇の両親の事を明確にしなくちゃいけないなと思ったので。続編があるかもしれません。あと、今回も銃出てきてなくてスミマセン。
















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