第13弾 葛藤
宿屋に着いた。
晩御飯を食べた。
ここまではいい。
何故俺と七花は同じ部屋なんだ!? しかも、ベッドは一つしかない。ドアの隙間からミクイーさんがニヤニヤしながら覗いている。覗くな!
このままでは、一緒に寝る事になってしまう! それはマズイ。いや俺的にはむしろウェルカムなんだが、小説投稿サイトでは見せられないような展開になってしまう可能性がある...!
この状況を打開出来る最善の手を...! ハッ! そうだ!
「七花、やっぱり一緒に寝るのはまずい。俺は床に布団敷いて寝るから」秘技·床で寝る事を提案!
「ダメだよ、風邪引いちゃうよ」見事にカウンターを決められました。
「年頃の男女が一緒に寝るっていうのは常識的にどうかなぁ」秘技·常識を持ち出す!
「昇、ここは多分地球じゃないんだよ。なら地球の常識なんて意味ないじゃん?」
コイツ、学校の成績は良くないクセに...!
「ほらぁ、一緒に寝ようよぉ...」
俺の中の悪魔が囁く。「いいじゃないか。大人の階段を登ろうぜ?」
俺の中の天使が叫ぶ。「迷っている暇はない! 突撃だ!」なんて欲望に忠実な天使なんだ...! 悪魔も若干引いてるぞ...
もうすでに俺の頭の中で「一緒に寝る」以外の選択肢は消去されてしまったので七花と一緒に寝ようと思います、まる。
危ねぇぇぇぇぇ!! 悪魔と天使に心を乗っ取られかけた! 「まる。」じゃねぇよ!
どうする? もはや本当に一緒に寝る以外の選択肢はないのか? するとそこにミクイーさんがやってきた。
「この宿屋は古くてねぇ... それこそベッドなんかの上で寝なくちゃ、木の軋む音がうるさくてかなわないんだよ。そんなことをお客さんにさせるわけにはいかないからねぇ、どうしても床で寝たいってんなら、追加で『1000000』バレツ頂こうかね?」出ました追加料金。チェックメイトです。
暗闇。ランプを消した部屋では、明かりとなるものは月明かりしかない。窓から途切れ途切れに入ってくる銀色の光が、部屋の中を幻想的に照らしている。
拝啓、お父さん、お母さん。僕は今、大人の階段を登ろうとしています――
!? 俺は今何を言っていた!? 完全に流されるところだった。このままだと七花の親御さんに挨拶しに行くことになりかねない。普通に小さい頃から仲良くしてもらっているから余計に気まずい。
今、七花と俺は同じベッドに入っている。仕方なくだ。仕方なくな! 出来るだけベッドの端によってるんだからな! しかし、七花はピッタリと密着してくる。小さい頃との色々な違いに否応なしに気付いて... このままでは、俺の中の『何か』が抑えきれなくなってしまう...!
「ねぇ 昇、覚えてる?」ふいに七花が口を開いた。
「!? はいっ!? 何!なんでしょう!」めちゃめちゃ焦った。
「昔はよくこうしていたよね...」そうだったな...
俺と七花は思い出す。日本にいたあの頃を――
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