第12弾 宿屋『コルト』

俺達は夜道を歩いた。途中ちょっとしたトラブルもあったが、なんとか宿屋に到着することが出来た。

「ここだな。ムファンさんが言っていた宿屋ってのは」

「いや、これホントに宿屋なの?」その通り。見た目は完全に廃屋だった。

「場所はあってるハズなんだけどね」ムファンさんの説明ならここであってるハズだが...

ムファンさんの説明はこうだ。

『ギルド出てまっすぐ進んで、白い犬がいるとこを左に曲がって、酒の空瓶が転がっている所を右だ』説明でも何でもねぇ。むしろここまでたどり着けたのは何故だ。

「いやぁ、多分場所が間違ってるんだ。探すのは明日にして、今日はどこかで野宿を「え? 昇といっしょに寝るの? やったぁ! 添い寝だね!」俺が喋っている時に喋るな。

「いや別に、添い寝する訳じゃ...」創造で寝袋とか作れるしね。

「なんで? "そういうこと"するんでしょ?」なんでするの確定なんだよ。

「七花、俺はお前と"そういうこと"をしたい訳じゃない。落ち着け」

「昇。いいんだよ。私は昇にならどうとでも...」

「そうだよ! 男なら甲斐性見せな!」いや甲斐性とかそういう問題じゃ... いや誰だ今喋った奴。瞬間で身構える。

気の良さそうなおばさんが横で笑っていた。ただ者じゃねぇ。

「あなたは、誰ですか?」

「いやいや、そんなに身構えなくてもいいよ。アタシはミクイー。ただの宿屋のおばさんさ。あんたら、宿屋を探してんだろ? ならアタシんとこへ泊まっていきな! サービスするよ!」会話を聞かれていたようだ。

「いいんですか? じゃあお願いします」

「よし! じゃあついてきな!」言うが早いがミクイーさんは廃屋の中へ入っていった。今日は野宿だな...

なんてふざけたことも言ってられないので、取り敢えず声をかける。

「ミクイーさん!? 大丈夫ですか!?」

「はっはっは。そりゃ最初は驚くのは当たり前だねぇ! いいからついてきな!」

全然良くないんですが。他に手段もないのでミクイーさんを追いかける。

廃屋は何故かトンネルの様になっており、少し先でミクイーさんが手招きしていた。わりとトンネルは長く、最初は下りだったが途中から上に向かっている。

――トンネルを抜けると、そこは宿屋だった。

「ここがアタシの宿屋、『コルト』さ!」

あ、着けた。


「で、どうだい? 感想は?」ミクイーさんがニヤニヤしながら感想を求めてくる。

「はい、とても美味しいです」俺達はミクイーさんの宿屋で少し遅めの晩御飯を

食べていた。飯は美味いし安い。最高だな。

「そうかい... それで、二人で旅をねぇ...」俺達は食べながらミクイーさんに自分達の身の上を語っていた。この人なら多分信用出来る。

「それで? 二人は恋人同士なのかい?」ミクイーさんが更にニヤニヤしながら聞いてくる。こういう話題好きそうだと思った。

「いや、別に恋人同士って訳じゃ「そうです! 恋人同士です!」うおおぉぉぉい!?

何を言い出すんだコイツは!?

驚いて七花を見る。するとコイツは、「入国審査の時みたいにすればいいんでしょ!」と目で語っている。うん、確かにあの時は合わせなくちゃいけなかったけどね?今は状況がね?

「やっぱりかい! じゃあ、部屋は一部屋でいいね!」いや、ダメだろ。

 

そして、色々あったあと、結局同じ部屋に二人で泊まる事になった。さっきから七花が妙に熱っぽい視線を向けてくる。俺は、この夜を乗り切る事が出来るのだろうか...?


  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る