第9弾 ステータスプレート

「――なるほど。それで、西の竜を倒されたと」

俺達は、どうやってドラゴンを倒したかとともに、自分達の身の上も語った。相手が極秘情報を話してくれたのだ。こちらも相応の情報を与えないと。

「いやしかし、異世界から『勇者様』はやってこられたのですか...」

「あの、その『勇者様』っていうのはちょっと恥ずかしいんですが...」

「こ、これは申し訳ありません! しかし、何とお呼びすれば...?」

「うーん、そうですねぇ。普通に、昇さん、七花さん、と」

「承知いたしました。しかし、異世界とは...」珍しい事なのだろうか。

「異世界から誰かが来るのは珍しい事なのですか?」

「まあ、珍しい事ではありますが、全くないわけでもありません。過去にも幾つか例があります」

「ならなぜ、異世界にこだわるのですか?」

「それがですね、過去の『勇者様』も異世界からやって来たようなのです」

なるほど。それで謎が解けた。教会に飾られているシモノフ対戦車ライフルは、多分俺達がいた世界の知識だ。おそらく過去の『勇者』もガンマニアだったのだろう。

「ところで、頼みがあるのですが、俺達が『勇者』だということは秘密にしてほしいんです。竜が退治されたのも、ふらっと来た『勇者』の仕業ということに」

「了解しました。それは、皆に騒ぎ立てられるのを防ぐためですね?」この町長はなかなか頭が切れる。見方につけれれば心強いだろう。

「そういうことです。あと、勇者はもう去ったということで」

「承知しました」

「あと、教えてほしいのですが、このレベルやスキルとは何ですか?」

「それはステータスプレートを見ながらの方が早いかと。ステータスプレートを拝見しても?」

「もちろん。どうぞどうぞ」俺と七花はステータスプレートを町長達に見せた。

町長達の顔色が変わる。

「西の竜を倒したというのも納得ですな... まさか、ここまでとは...」

「レベルやスキルとは、どういった物なのでしょう?」

「レベルというのは、簡単に言えばその人の強さのことです。スキルは、その人が使える能力です」なるほど。大体俺が知ってる事と変わりはない。

「ちなみに、職業というのもありましてな。これは登録するとステータスプレートに表示されるのです」

「僕達のスキルはどのような能力なのでしょう?」

「では、七花さんから。まず、この『絶対感覚』ですが、五感の感度を最大まで上げる事が出来ます。感度の調節も自由自在です。次の『限界突破』は、一時的にあらゆるスペックの上限を解放させる能力。しかし強大な力を一気に手にするため、解除時の反動もかなりキツイです。『超反応』は、自らの精神を覚醒させます。これにより、精神ダメージを無効化し、相手の考えを読む事も可能となります。まあ、タイムリミットはありますが」

町長が七花のスキルを説明している間、俺はどんどん憂鬱になっていった。

――なにそのチートスキル。俺いらないじゃん...

町長は俺の気も知らないで説明を続ける。

「『剛力』は、スキル『強力』の進化版です。スキルにもランクというものがあり、ある程度レベルが上がると、一つランクが上がり+が付きます。更に上がると++になるのですが、もう一段階上がるとスキルそのものが変わり、更に強くなるのです」

そういえば、ムファンさんは『強力』だけだったな。このスキルは更に三つ上ってことか。

「『瞬時理解』は、手にとったものの情報を瞬時に読み取る事ができます。しかし、ある程度の予想がなくてはなりません。例えば、リンゴを『これは武器だ』なんて考えながら手にとっても、何も読み取れません」なるほど。予備知識が必要ってことか。

「『飛翔』は、名前の通り空を飛ぶ事が出来ます。しかし、風の魔法の力を借りているので風が下に吹き荒れる事となります。まず街中では使いません。使うのは、中距離移動の時ぐらいですかね」次は俺か...

「昇さんのスキルですが...」? 何か悩んでいるぞ。

「この『創造』というスキルですが、かなり珍しいものです。過去にこのスキルを身に付けた者は数える程しかいません。伝承によると、一度見たものは生物以外何でも創造できる、と」チートじゃねぇか。

「そのため、この世界に存在する最も獲得が難しいスキルの一つに数えられています。このスキルを身に付ける方法は二つ。先天的に身に付いているか、このスキルを身に付けているものから獲得する、です。」

「獲得、とは?」

「スキルを持っている者を殺すと、そのスキルが奪えます。また、そんなことをしなくてもスキルを持つ者に認めて貰えれば、そのスキルを譲り受けることができます」

「なるほど」必ずしも殺しあう必要はないということか。

「『集中力』と『忍耐力』ですが、これらはまあそのままです。集中力と忍耐力が飛躍的にアップします。昇さんのは++が付いているので、更に効果があります。後の三つは、七花さんと同じです」サバゲーで鍛えた集中力と忍耐力だ。まさか異世界でスキルになるとは... 狙撃も悪くないな。

「しかし、この???は全くわかりません。ステータスプレートは魔法で動いているのですが、その魔法はとても複雑な物なので、いまだに解明されていません。そのステータスプレートにさえわからないとなると、もはやお手上げです。期待に添えない私をお許し下さい」

「まあ、気にしないで下さい。では、このレベルというのは?」

「レベルというのはその人の単純な強さです。昇さんと七花さんのレベルなら、人間は軽くワンパンです」ワンパンておま。

「僕達は人間をワンパンで殺せると言うことですか?」

「そうです。お二人が本気を出せば、この町は三日で崩壊です」

「えっと、じゃあ冒険者登録をしていただけますか?」慌てて話題を変える。

「かしこまりました。では、この書類にサインを」

渡されたのは、一枚の羊皮紙。相変わらず、何て書いてあるかは読めないのだが、『瞬時理解』が使えるかもしれない。果たして...

成功だ! 一応、何て書いてるかは読める。これは便利だ。

「サインはすみましたか。この書類には、特別な魔法がかけられています。これで、お二人は冒険者になられましたよ。ステータスプレートをご覧下さい」

本当だ。ステータスプレートに変化が起きている。


名前·井坂昇 種族·人間 性別·男 職業·冒険者 ランク·銅 Lv.56 

攻撃·112 防御·112 身体·112 治癒·112 魔耐·56 魔適·56 精神·56

スキル 創造 集中力++ 忍耐力++ 剛力++ 瞬時理解 飛翔 ???


オォ...! 各種パラメーターが凄い高いぞ...! これなら無双出来るんじゃ...!

「七花、お前のはどうなんだ?」七花のステータスプレートを覗き見る。


名前·南部七花 種族·人間 性別·男 職業·冒険者 ランク·銅 Lv.56

攻撃·168 防御168 身体·168 治癒·168 魔耐·112 魔適·112 精神·112

スキル 絶対感覚 限界突破 超反応 剛力++ 瞬時理解 飛翔


...俺なんかより断然強いんじゃん...

「私でこれってことは、昇はもっと凄いんだろうね!」七花の期待が俺の胸をガシガシ削ってくる。やめてもう言わないで。

「攻撃はそのまま攻撃力、防御も防御力、身体は脚力や腕力の総合です。治癒は治癒力、精神は精神ダメージに対する強さを表します。魔耐と魔適は魔法の耐性と魔法の適正です」

1レベル上がるごとに攻撃、防御、身体、治癒は2上がり、魔耐、魔適、精神は1上がるっことか。でも、コイツ(七花)は攻撃、防御、身体、治癒は3上がり、魔耐、魔適、精神は2上がっている。体質の問題かな? それともバカだからかな?

「しかし、わからないことがあります。何故お二人は、ステータスプレートを持っていたのでしょう? ステータスプレートは申請しないと貰えないのですが...」

「それが、僕達にもわからないんです。この世界に来たときにはもう付けてあって...」

「そうですか...まあ、わからないならわからないで構いません」

「町長さん、色々とありがとうございました」

「いえいえ、滅相もない。昇さん、七花さん、この町を救ってくれたことを重ね重ねお礼致します。何かしてほしい事があったら、何でもお申し下さい。」

「あ、じゃあこの竜の角と鱗を換金出来るところを教えてくれませんか? 路銀は必要なんで」

「冒険者ギルドに行けば買い取ってくれるでしょう。何でも換金してくれることで有名なので」

「ありがとうございます。じゃあ、僕達はこれで」

俺達はお礼を言って教会を出た。かなり長く話し込んでいたようだ。太陽が地平線に触れるか触れないかのところにいる。

「よっしまずは、換金だな!」こうして、俺達の冒険者生活は本格的に始まった。
















  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る