第8弾 教会

「ここが、この町の教会です」町長は、俺達を教会に案内してくれた。

厳かな十字架。太陽の光を七色に変えるステンドグラス。この空間に居るだけで、見も心も浄化されそうだ。ここは、俺が知ってる元の世界の教会とあま違わなかった。

――ただ一点を除いて。

「町長さん。もしかして、話というのは"アレ"に関係しますか?」聞いてみた。

「はい。"アレ"に関係します」ほら、やっぱり!

"アレ"とは、少し高い台の上に鎮座している銃のことだ。俺の記憶が正しければ、あそこは神様の像とかがあった場所だと思うんだが... 俺が教会に詳しくないだけで、あそこは普通銃を飾る場所なのかな?

「近くで見ても?」

「どうぞ。何なら手に取ってもらっても構いません」お言葉に甘え、俺は銃を手に取って観察する。なるほど、所々錆び付いてはいるが、確かに銃だ。でも、何故この世界に銃が? 俺の勘違いなだけで、この世界は普通に銃がある世界なのか?

俺が銃について考えている間、町長は語り始めた。

「この町には、とある予言がありましてな... 実はこの町は、まだ出来て間もない頃、強大な力、西の山に巣食う竜によって一度滅ぼされれかけたのです。これは後からわかった事なのですが、その竜は『魔王』の手下だったと」ハイ出た。ファンタジー世界の悪の代名詞、『魔王』。やっぱりソイツを倒さないと帰れないんだろうか?

「滅ぼされれかけたということは、滅ばなかったということてすね?」

「そうです。今この町があることが何よりの証明。その時は、『勇者様』が、この町を救ってくれたのです。」ほう。ここで『勇者』と繋がるわけか。

「『勇者様』はその鉄の塊で見事に竜を討ち取ってくれました。その時の言い伝えからそれが武器であることは間違いないと思うのですが、どう使うかもわからずただ錆び付かせるだけで... お恥ずかしいかぎりです」

『勇者』がこれを使っていただと? なら、その『勇者』はまさか...

「ここまではこの町で普通に伝えられている伝承です。しかし、ここから先は限られた人しか知りません。町長やその秘書、神父などです」

「そんな大事な事を僕達に教えても大丈夫なのですか?」

「あなた方は『勇者様』なので」『勇者』絶大の信頼置かれてんな。

「『勇者様』は竜を倒したあと、こうおっしゃられました。『確かに竜は倒したが、これで終わりではない。今から遠い未来、竜は再来するだろう』私達は絶望しました。しかし『勇者様』は、『気を落とすな。竜が再来したとき、勇者も再び現れる。そして、竜を討ち取ってくれるだろう』とも仰られました」

竜の再来ねぇ...何か心当たりあるんだが。

「未来の「勇者様」の様子も教えてくれました。男女の二人連れ、長い鉄の棒を背負い、この町に到底釣り合わないレベルの持ち主だったと」あああああああ、やっぱり!俺達にドンピシャじゃねぇか。

「一ヶ月前、西の山に竜の姿を確認してから、我々は『勇者様』はもうすぐ現れると確信していました。そして我々は見つけたのです! 『勇者様』を! どうか、どうかもう一度この町をお救い下さい!」さっきから気になってたんだが、その竜ってもしかして...

「ねえ、その竜ってこれに関係ある?」七花がさっき倒したドラゴンの角(の欠片)と鱗(の破片)を取り出して町長達に見せた。

七花以外全員がフリーズした。ややあってようやく町長が口を開く。

「お、おお、これは...! 紛れもない、西の竜の角と鱗...! 『勇者様』、これを一体どこで?」もう誤魔化しはきかないな。

「さっき倒したドラゴンから剥ぎ取ってきたものだが?」

「「「勇者様------!!!」」」三人が土下座してきた。超デジャブ。

俺はすがり付いてくる町長達に慌てながらも、さっき見た銃の事を考える。

『勇者』がアレを、ねぇ...

祭壇に飾られている銃。それは、シモノフ対戦車ライフル。デクチャレフと同じ、対物ライフルだ。





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