第6弾 いかついおっさん

さて。入国審査官の手からも逃れ、何とか町に入った訳だが。まずは、この町の状況を確かめなくてはならない。つまり、文明の発達状況だ。こちらが理想とするのは、

1、銃が存在しない(有利な情報となるから)

2、貨幣制度が確立している(ドラゴンの鱗や角を売りたい)

3、最低限生活が出来る(生きていくため)

4、スキルやレベルが何なのかがわかる(単純に謎)

これぐらいか。さて、町の様子は...

見渡したところ、銃は存在しないようだ。冒険者っぽい身なりの者もいるが、ほとんどが刃物を持っている。残りは弓とかだな。これで、1はクリアだ。

次は貨幣制度だが、これも大丈夫そうだ。店で、品物とお金のようなものを取引しているのが見えた。これで、2もクリア。

3だが、これも多分大丈夫だ。発展具合はまずまずといった所だが、上下水道は通っている。衛生面も問題ないだろう。これもクリア。

問題は4だが、これは誰かに聞いて見ないとわからないな。入国審査官と話せたため、言葉は通じる。しかし、さっきからちょくちょく見かけている文字のようなものが全く読めない。これはちょっと不安だ。場合によっては覚えないといけないかもしれない。

「七花、取り敢えずギルドを目指す。冒険者っぽい人がいるところをみると、ギルドじゃなくても何かしら団体があるってことだ。問題は、どこにあるかだ...」

「それならあれじゃない?」七花は右の方を指差している。こいつ絶対適当だろ。

「七花、適当に行ってもダメなんだ。出来れば今日中に着きたい」もう太陽は天辺より少し傾きはじめている。

「えっと、適当じゃないよ? あっちの方へ冒険者っぽい人が行ったり来たりしてるのをさっき見たの。冒険者っぽい人がいるところへ行きたいんだよね? じゃああっちへ行った方がいいと思う」な、なるほど。こいつ、本当は俺なんかよりずっと賢いんじゃないか?

「なるほど。お前、賢いな。ありがとう」素直に称賛の声が出た。

「えへへ、いいってお礼なんか。照れるよ~」七花は体をくねくねさせている。恥ずかしいから止めなさい。取り敢えずそっちへ向かってみよう。

――ということでやって来ましたギルドっぽい建物。見るからにギルドだ。

入った瞬間、中の人達が一斉にこちらを向く。向けられるのは、奇異の視線。そりゃそうだ。服装から違うからな。そこかしこでひそひそ話をしているのがわかる。七花が服の裾を握りしめてくる。かわいい。まあ、周りはいかついおっさんだらけだ。怖いのもわかる。無視してカウンターへ進もうとしたその時、

「よう兄ちゃん、もしかして冒険者志望か?」いかついおっさんがいかついハスキーボイスで話しかけてきた。アカン、逃げよう。

「は、はい。そうです。」まあ逃げても追い付かれそうだからしないけど。ずっと眉間にシワをよせてガンをつけてくる。チビりそう。

「そうか... 冒険者か...」もしかして、ここでは冒険者は滅ぼす対象なのだろうか。鳥肌がたって震えが止まらない。正直ドラゴンより怖い。

「兄ちゃん...」あ、終わった。七花、せめてお前だけでも助かってくれ...!

次の瞬間、おっさんは満面の笑みを顔に浮かべて嬉しそうに言った。

「歓迎するぜ!ようこそ、『マーズル』のギルドへ!」

一瞬、これは夢かと思った。だっておっさんにボロ雑巾にされると思ってたもん。よく見ると、周りのおっさんも皆嬉しそうだ。てか、ギルドでやっぱりあってたな。

「え?あ、ありがとうございます」取り敢えず感謝しとく。

「俺達も冒険者でな!冒険者は皆家族みたいなもんだ!何かわからない事があったら何でも聞いてくれ!」はしゃぐおっさん。なるほどね、冒険者は歓迎されてるってことか。

「あ、じゃあしつもーん!冒険者はなるにはどうすればいいの?」七花が元気に聞いた。お前コミュ力高いね。

「おう、元気がいいな嬢ちゃん!冒険者になるには、あそこのカウンターに行きゃいい。色々教えてくれるぞ」アンタが教えてくれるんじゃなかったのか?

「ありがとう!行ってみるね!」七花が元気にお礼をする。

「兄ちゃん、なかなかいい女連れてるじゃねえか。もしかしてお前のコレか?」おっさんが小指を立てて囁いてくる。しばくぞ、お前。

「そんなんじゃないですよ。ただの連れです」しっかり否定しとく。

「なんだ、そうか... まあ、今後に期待ってことだな。」お前ちょっと表出ろ。

「俺の名前はムファンだ。宜しくな」おっさん改めムファンさんが握手を求めてくる。何だかんだでいい人なんだろう。

「井坂昇です。宜しく、ムファンさん」俺もしっかりと手を握り返した。

「私は南部七花!宜しくね!」七花もちゃっかり自己紹介している。

「あ、お前らステータスプレートは持っていないよな?それも、カウンターで発行してもらえるからな!」

「それってもしかして、この板のこと?」七花がステータスプレートを出した。

「おう、それだそれ!なんだ、持ってんじゃねえか!それは身分証明書みたいなもんだから、それがありゃ冒険者手続きがグッと楽になるぜ!」

「へー。ちなみにムファンさんはどんなステータスプレートなんですか?」もしかしたら見せてくれるかも知れない。見せてもらえれば、ある程度の平均の強さがわかる。

「おうよ!これが俺のステータスプレートだぜ!」案外すんなり見せてくれた。


名前·ムファン 種族·人間 性別·男 Lv.31

スキル 強力 集中力 鉄拳


へ?俺達よりレベル低いじゃん。しかも、俺のスキルが『集中力++』なのに対し、ムファンさんのは『集中力』だけだ。どういうことだ?

「どうだ?すげぇだろう?俺はこの町で一番強い冒険者なんだ」なら俺達を入れたら三番目だな。

これはもしかして、そういうことなのか?俺達はドラゴンを倒したから、えげつないくらいレベルが上がっているってことか?

まあ、全部カウンターで聞いてみるか。俺達はムファンさんにお礼を言い、カウンターへ向かった。









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