第5弾 恐怖の入国審査官
滝のように吹き出る汗。行き場を失った雫が頬を滑って顎から滴り落ちる。拭っても拭っても止めどなく流れ落ちる汗に、
「あ、あ、あ」俺は今日何度目かわからない心の叫びを上げた。
「暑い----!!」
なぜこんなことをしているかというと、七花が見つけた町へ行くためだ。その町はスコープで確認したところ、確かにあった。なので、取り敢えずそこを目指してみることに決めたのだ。
ただ、一つ重要な点を見落としていた。町への道のりがめちゃくちゃ長かったのだ。そりゃあ、スコープ越しなら近くに見えるだろうよ。しかも今の俺は、PTRD1941を背負っている。新手のイジメだ。
「ほらー、昇!こっちこっち!早く早く!」お前は悪魔か?
何で七花は全然疲れていないんだ? 汗一つかいていない。こいつは体力バカだったが、どうもそれだけじゃないような気がする。もしかして、スキルってのが関係しているのか? 町に着いたら聞いてみよう。
そして、何回も意識が飛びそうになるのを何とか堪え、やっとのことで町の城壁までたどり着くことが出来た。
「おや、珍しい。旅人さんですか?」城壁で入国審査官っぽい人が聞いてきた。
「あー、違うの。私たちは何でかこの世界に来「そうです。旅人です」
俺は七花の口を塞いで無理矢理肯定した。
「ちょっとすみません」「もが、もごご」そして、七花をちょっと離れた場所に連れていき、声を潜めて話し始めた。
「お前バカか!? 正直に答えたら何されるかわからないんだぞ!?」
「あ、そういうこと? なるほど、昇かしこいね!」
「いや、気付かないお前がバカなだけだ」
再び入国審査官の所へ戻る。
「いやぁ、すみません。ところで、僕達田舎者な者で。少し聞きたいことがあるんですが、いいでしょうか?」
「まあ、この町も田舎ですけどね-... いいですよ、何でも聞いて下さい」
ここで俺は、気になっていた質問をぶつける。
「この町へ入るのに、何か特別な手続きはいるんでしょうか? ほら、僕たち、田舎者なもんで...」
すると入国審査官は、すっと目を細めて剣呑な目付きになった。ヤバい、何か地雷を踏んだか...? 冷や汗が止まらない。
「そのことですがね...」一応、身構えておくか...?
入国審査官は、大きいアクビをした。
「ああ、すみません。眠くて眠くて。入国の件ですが、全然大丈夫ですよ。特に手続きはいりません」ああ、よかった...
「ありがとうございます。じゃあ、僕らはこれで」
「ありがとうね!バイバイ!」
「あ、最後に一つ」!? まだ何か!?
「その背負っている鉄の棒ですが...」まさか、置いていけとか...?
「教会で同じような物を見たことがあるような気がします。一度訪ねてみるといいですよ」お前は、何回驚かせれば気が済むんだ...
「ありがとうございます。訪ねてみます」
「あ、移住も多分禁止していないと思うので、この町に住むことになったら遊びに来てくださいね!とてもヒマなので!」
とても親切な入国審査官に見送られ、俺達は町の城門をくぐった。
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