第2弾 異世界
うっすらと目を開ける。そこには俺が今までいた部屋は、ない。
「おい、七花。お前マジで何したんだ」
「えっえっえっ、知らない知らない、昇こそ何したの?」
土を踏みしめる感触。柔らかい草の香り。どこまでも広がっている青空。どこだ?ここは。少し高い丘の上に居るんだが...
今考えられる可能性は2つ。
1、異世界転移した。
2、俺を無理矢理学校に行かせようとした七花のドッキリ。
...七花の表情からウソは見受けられない。こいつは、すぐ顔に出るタイプだからな。となると、1の線が濃厚か... いや、まさか本当に異世界転移なんて現実で起こるわけな――
「ねぇねぇ昇、アレ、私的にはドラゴンだと思うんだけど。これ、結構ヤバイんじゃない?」
地平線の彼方、そこにいても巨大とわかる謎の生物が空を飛んでいる。確かにファンタジー世界のドラゴンに似ている気もしないではないが...
「ねぇ昇、こんな状況で言うことじゃないのかもしれないんだけど、首から何ぶら下げてんの?」
「は?なんだそれ」
自分の首もとに視線を動かす。すると、確かに何かがぶら下がっていた。
薄い長方形の板だ。俺が今まで読んだ異世界転移系の本の知識と照らし合わせると、ステータスプレートのように見える。
「何か文字書いてるよ」
何て書いてるんだ?
名前·井坂昇 種族·人間 性別·男 Lv.1
スキル·創造 集中力++ 忍耐力++ 鑑定 ???
ふむ。完全無欠にステータスプレートだ。名前、種族、性別はわかる。しかし、このスキルが全然わからない。この「???」ってなんだ?
「ってか、お前もつけてんじゃん」
「あ、ホントだ」
名前·南部七花 種族·人間 性別·女 Lv.1
スキル·絶対感覚 限界突破 超反応
うわあああ。めっちゃ強そう。絶対感覚?なにそれ怖い。
「うーん、これはちょっとわからない。他の人に聞いてみないと」
こういう感じの異世界転生モノだと、まずはギルドとかに行くのがテンプレなんだが...
「ねぇねぇ昇、ねぇ昇」
「うるさいな、今ちょっと考え事してる」
「いや、そんなことよりも、何かドラゴン大きくなってない?」
どういうことだ?
先ほどドラゴンがいたところに目をむけると、確かにドラゴンが大きくなった
ているんだが。あ、これヤバい。
「違う、七花、これ、近づいてきてる」
「え、ヤバくない? 逃げる?」
いや、逃げても間に合わない。ドラゴンとの距離は2000メートル程。あのスピードなら、ここへ到達するのに数分もかからないだろう。
逃げられない。ならばせめて意志疎通が出来ればいいが...
「あ、何か火吐いた!」
ドラゴンは口から火球を吐き出し始めた。ダメだ。完全に殺そうとしている。
倒すしかないか...しかし、武器がない。ここに対物ライフルがあれば、あるいは...
頭の中でイメージを作り上げてゆく。イメージするんだ、対物ライフルを。異世界転移モノで創造というスキル。こういうのは、イメージすればそれを作れる系のスキルなハズ。
俺は、この対物ライフルなら内部構造も全て理解している。作り出せれば、必ず使える。自信がある。
果たして――
完成だ。今、俺の手の中には一丁の銃がある。もちろん、これを使ったところでドラゴンに勝てるという保証は何もない。ただ、何もしないよりはマシだ。
デクチャレフ対戦車ライフル。ソ連製の対物ライフル。
ドラゴンとの距離、残り1500メートル。
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