異世界に銃を持ち込んだらチートな件。

粉羽朱足

第1弾 ただのオタクだった

なんとなく生きて、毎日をだらだらと過ごす。

そんな日常が続く、はずだった。

あの日までは。


薄暗い部屋。沢山のモデルガン。マウスのクリック音とキーボードのタイピング音だけが、時折BGMの様に聞こえてくる。

「ふぅ...外国人だって、ゲームが強い訳じゃないんだな...」

ふいに少年が喋った。

「いや、昇が強すぎるだけだよ...」

少女の声も聞こえた。

「って、そうじゃなーーい! 今日こそは昇を学校に連れて行くんだから!」

少年は視線を画面から離さずに言う。

「ほう?面白い、やってみろ!」

少女は少年の首を締めた。無慈悲だ。

「い、痛い痛い痛い! ギブギブギブ! 少しは加減ってものを知れ!」

「こうでもしないと学校に行かないでしょ? てか、昇はなんで学校に行かないの?」

少年は、悲しげに目を伏せる。

「ほら、俺、こんな状況だし、な?」

「何シリアスな感じ出してるよ。ただ面倒くさいだけでしょ?」

少年、井坂昇はどこか遠い目で部屋にある無数のトロフィーを見渡した。すべてサバゲーの大会のトロフィーだ。

井坂昇はサバゲーの天才なのだが、自分では気付いていない。自分ではただのガンマニアだと思っている。ついでに、他のサバゲープレイヤーに「鬼のイサカ」や「荒らし」などと呼ばれていることも知らない。

「外には出れるのに、学校に行かないなんて勿体ない! 楽しいんだからサバゲーと一緒だよ!」

「サバゲーと学校を一緒にするな」

「ほら、行こう!今日は行くまで七花ちゃんここを動きません!」少女、南部七花は、力強い声で宣言した。

「自分のことちゃん付けするキャラじゃねえだろ。遅刻すっぞ」

「昇のためなら、私はどうだっていい!」

普通のラブコメの主人公ならときめいてしまいそうなセリフだが、昇はわりと本気で引いていた。表情が「うわぁ...」と物語っている。当たり前だろう。昇は幼馴染みのこいつに16年間熱烈なアプローチを受け続けているのだ。

「はあ、いっそのこと異世界にでも飛んで行きたい...どうせなら、実弾銃で無双したい...」

その瞬間、部屋が消えた。




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