懺悔7

「おぉ、神はなんと寛大な御心をお持ちの事でございましょう。

神父様、最後の私の我儘を聞いて頂けないでしょうか?」



神父はこれで悪夢から解放されるならと承諾の意思を伝えた。


「私はきっとこの嵐が過ぎる頃には命を落とすでしょう。

自分の身体のことだから終わりは分かっているのです。

具合が悪く喋ることの辛い神父様のことです。話せずとも分かります。心配してくれているのですね。

でも仕方がないのです。彼女と私を繋いでいる部分から緑の膿みが溢れ、ぼとぼとと彼女が剥がれていくのです。

いままで実験してきた動物の末路と同じなのです。

いまから別の助かる方法を探そう?神父さまは本当にお優しい。

ですがもういいのです。もう疲れてしまった。

彼女のいない世界にもう未練はないのです。

今は一秒でも早く天国で彼女に会いたいです。

ただひとつの願いは彼女と私の究極の愛であるこの身体の為にお墓を作って頂きたいのです。

ここまで話を聞いて下さった神父様にしか頼めないのです。

どうか……よろし、く……おね…………」



男はずっと黙っている神父と一人で会話をし続け、いつしか絶命していた。

力なく座る神父は隣の懺悔室を確認する余裕は残っていなかった。

神父は異臭と汚物に塗れたまま、ただ座りつくすしかなく虚ろな瞳は呆然と壁を眺めていた。

嵐が過ぎるまで長い夜が続く……。

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懺悔 真白世界 @shino69

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